専門医インタビュー
お近くの整形外科やクリニックで診断を受けた際、多くの患者さんが保存療法から治療を開始します。痛みを抑えるための飲み薬、癒着した組織を剥がして肩をスムーズに動かせるようにするための注射、患部を温めて血行を促進させる物理療法、求心位を調整するためのリハビリテーションなどが代表的な方法です。リハビリテーションは患者さんの状態に合わせて、肩関節周囲の筋力トレーニングを行います。よく誤解されがちなのが、リハビリは通院した際だけ理学療法士の指導に従って行うのではなく、理学療法士に教えてもらった内容をご自宅で毎日実践していただくことがとても大切です。
痛いと動かしたくなくなる気持ちは分かりますが、動かさないでいると関節が固まってしまい症状が悪化する可能性があります。通院時だけ行うのと毎日行うのとでは、改善に大きな差が出ますから、ぜひ他力本願にならず積極的に行っていただきたいと思います。
保存療法を3か月~半年ほど実施しても改善がみられない場合は、MRI検査の結果なども考慮した上で手術について検討していきます。手術を決めるのは患者さん自身ですが、大切なのは、手術をして終わりではないということです。肩をスムーズに動かせるようにするために術後、半年~1年くらいは安静とリハビリを続ける必要があります。
お仕事やご家族の介護など色々な事情があると思いますが、そのような環境に対応できるかどうか、よくご家族とも相談していただき決断されることをお勧めします。
上方関節包再建術
一般的には損傷した部分を修復する手術が行われます。以前は肩関節を大きく切開して修復を行っていましたが、最近では内視鏡を使った方法が普及しつつあります。小さい傷口からカメラと手術器具を挿入し手術を行うので、従来の方法と比べて患者さんの負担が少ないことが特徴です。
腱板損傷では、腱板の状態によって修復が可能かどうかを検討していきます。
腱板が大きく損傷している場合でも前側と後ろ側の腱板が修復できる状態であれば、前後で肩関節を挟んであげることで、十分に安定した肩関節を期待することができます。広範囲で腱板の損傷が起きている場合には、大腿部(太もも)の筋膜を移植する鏡視下上方(じょうほう)関節包再建術が選択されることもあります。
リバース型人工肩関節置換術
加齢性変化により腱板の状態が悪い場合や軟骨がすり減り関節が変形している場合には、関節全体を金属などでできた人工関節に置き換えるリバース型人工肩(かた)関節置換術という方法があります。リバース型人工肩関節置換術は原則65歳以上などの適用条件があります。さらに、手術をする医師にも厳しい基準が設けられていますので受けられる施設は限られています。
これらの手術は、痛みが軽減されるだけでなく肩を上げるなどの動作改善が期待できるといったメリットがあります。一方で、鏡視下上方関節包再建術の場合は術後に腱板が再断裂するリスクがあります。症状によっては再手術が必要となることもあるので、腱板の状態や年齢などを評価した上で選択することが重要です。
またリバース型人工肩関節置換術の場合は術後、肩の使い方によっては人工関節が損傷してしまうことがあります。術後は安静とリハビリをしっかり続けるほか、人工関節に負担のかかる動作は控えていただくよう注意が必要です。
骨折により骨の位置がずれてしまっている場合には、ずれた骨の位置を調整し金属でできた器具で固定する骨接合術を行うケースが多いです。骨折した部分を合わせることで術後、骨癒合(骨同士がくっつくこと)を目指します。
金属でできた器具は骨の外から設置するプレートや骨の中(髄内)に入れる髄内釘などさまざまな種類があり、骨折の状態や骨質などを考慮して選択されます。
一方、骨折している位置や骨質によっては骨癒合が期待できない場合もあります。その場合には、上腕骨頭側のみを人工関節に置き換える人工骨頭置換術やリバース型人工肩関節置換術が選択されることがあります。
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