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専門医インタビュー

痛みを取るだけでなく、日常生活をランクアップするための人工膝関節置換術

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神奈川県

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日本整形外科学会専門医、日本リウマチ学会専門医、日本リウマチ財団登録医、日本整形外科学会認定リウマチ医、日本整形外科学会認定脊椎脊髄病医、日本整形外科学会認定スポーツ医、日本リハビリテーション医学会臨床認定医 他、

この記事の目次

術後のリハビリの重要性ついて教えてください。

リハビリルーム

術後は、できるだけ早く動くように指導しています。手術の翌日には、ベッドから車いすに乗り移ったり、膝を曲げる練習も始めます。人工関節の目的は膝の痛みを取ることですが、さらに膝をスムーズに動かせるようになるには、術後のリハビリをきちんと行うことが大切です。中でも、膝の曲げ伸ばし運動は重要で、脚を乗せるだけで自動的に膝を曲げ伸ばしするCPMという機械を使用したり、タオルなどを使ってゆっくり膝を伸ばす運動を覚えていただきます。その後は、平行棒を使っての歩行訓練、次に歩行器で、そして杖を使って歩けるようになれば退院可能です。

リハビリは、患者さん個人の状況や環境を
踏まえた上で、指導を行っています。

なお麻生区は、横浜市の中でも高齢者の住民が多いエリアです。実際に高齢の患者さんも多くいらっしゃるため、特に術後のリハビリ訓練には時間と人手をかけています。具体的には、当院には理学療法士、作業療法士、言語聴覚士が計90人ほど在籍しているのですが、一人の患者さんに対し理学療法士と作業療法士が各1人、合計2人の担当がついて、リハビリ指導を行っています。理学療法士は脚の曲げ伸ばしや歩行訓練を指導し、作業療法士は、台所仕事や家の掃除をするのにどうやって脚を動かしたらいいか、風呂に入る時の動かし方はどうするかなど、日常生活における動作訓練を指導します。リハビリは本人のやる気が一番大切です。やる気がある人は、どんどん回復していきます。

手術におけるリスクについて教えてください。

人工膝関節置換術で注意しなくてはいけないのが、患部に細菌が入り炎症を起こす「感染症」と、脚にできた血栓が肺に飛んでしまう「下肢深部静脈血栓症・肺梗塞(いわゆる、エコノミー症候群)」です。特に感染症については、術中の感染を防ぐためには万全な対策をとっていますが、術後何年も経過してから罹る場合もあります。具体的には、虫歯や膀胱炎、気道などの体の他の部分で炎症を起こし、その細菌が血液を通って患部に付着します。金属に細菌が付くと洗い流すくらいでは取れないため、感染が分かったら、入っている人工関節全てを取り換える「再置換術」が必要になります。なお人工関節は、長い時間が経過すると緩んできてしまうこともあります。術後、膝が赤く腫れたり、水がたまったり、レントゲンで緩みが見えたりしたら要注意です。早く見つけることができるように、術後の定期検診はきちんと受けてください。このようなリスクは起こる確率としては稀ですが、可能性がゼロではないことも、手術の前には十分に説明します。

術後、気を付けるべき動作はありますか?


患者さんには、膝に体重がかかるような動きや、膝を直接床につけるような姿勢は避けるように注意しています。また、正座もしないようにとお願いしています。膝を使えば使うほど、インプラントに負荷がかかります。水泳やゴルフ、登山など、余り激しくないスポーツは問題がありませんが、サッカーやシングルテニスなど、衝撃を伴うスポーツは勧められません。日常生活が問題なく送れるようになるには、退院後3か月程度かかります。しかし、半年も経てば手術したことを忘れてしまうくらいスムーズに動けるようになりますから、逆に無茶しすぎないように気をつけてください。

膝の痛みを抱えている人へ一言をお願いします。


変形性膝関節症と診断された場合、保存療法から順を追って治療をしていくことになります。関節変形の進み具合が軽度であれば、治療に手術を必要としない人もたくさんいます。保存療法で経過を診て、どうしても痛みが取れない時に、始めて手術を考えることになります。人工膝関節置換術は日本で年間7万件も行われている、非常に安定した手術方法ですが、多くの人は手術自体に恐怖感をもっていることでしょう。医師としては、患者さん個々人と「手術は怖いものではないですよ」とじっくり時間をかけて話をするとともに、できるだけ正しい情報を提供するよう心掛けています。何よりも大切なのは、患者さんと医師の信頼関係だと考えています。
人工膝関節置換術を受けると、痛みが取れるだけでなく、間違いなく日常生活の質もランクアップします。高齢者が要支援になる原因で、一番多いのが変形性膝関節症だといわれています。手術にもタイミングが必要で、膝が曲がらなくなって、筋肉が硬くなってからの手術は回復も遅く、術後の曲がり具合も期待できません。筋肉が柔らかいうちに手術をしたほうが機能回復は良好ですので、要介護になる前に「早い段階で手術を」という選択もあるかと思います。膝の痛みを我慢して、一人で抱え込まないで、早めに専門医に相談をしてください。


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