専門医インタビュー
神奈川県
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手術室の風景
膝関節の手術には、関節鏡(胃カメラのようなカメラ)を用いて滑膜を切り取る「滑膜切除術」や「骨切り術」、「人工膝関節置換術」などがあります。滑膜切除術は、主に関節リウマチが原因で膝関節が痛んでいる場合に用います。骨切り術は、自分の骨を切って角度を変えることでO脚を矯正し、膝の内側にだけにかかっていた重みを反対側にもかかるようにする手術です。この骨切り術は、変形性膝関節症でも比較的年齢が若く、骨が丈夫な人に行います。そして、変形性膝関節症の最終的な治療法として行われるのが、人工膝関節置換術です。人工関節の適応年齢は骨切り術よりも年上で、おおよそ50代半ば~60代以上が一般的です。しかし、最近は人工膝関節の耐用年数も伸びていることから、若くても変形が進んでいる場合でも年をとるまで待つようなことはせずに、手術を行うことも多くなりました。
全置換術 術前と術後のX線
部分置換術 術前と術後のX線
そもそも人工膝関節置換術とは、変形した膝関節を取り除き、金属やポリエチレンなどでできた人工の膝関節に置き換える手術で、術後は痛みなくスムーズに動くことができるようになるのが特徴です。膝関節は3つの骨からできており、脛骨(すねの骨)の上に大腿骨(太ももの骨)がのっており、さらに大腿骨の前面には膝蓋骨(膝のお皿)があります。人工膝関節置換術には、これら全てを人工関節置き換える「全置換術(TKA)」と、膝関節の傷んでいる側だけを置き換える「部分置換術(UKA)」があります。
多くの場合は全置換術が適応になるのですが、手術時間は1時間15~30分くらい、また入院期間は2~3週間です。部分置換術は、膝の片側のみが悪くなっており反対側の状態はそれほど酷くない場合など、進行が全置換の場合と比べて軽度の方が対象になります。手術時間も1時間程度で、術後の機能回復が早く1~2週間で歩くことができるようになります。また、靭帯が残っているため膝が安定している、膝の曲がりも良いなども特徴です。活動性の高いと早く緩んで再手術が必要になるといわれていたため、これまで部分置換術は活動性の低い高齢者が適応とされてきました。しかし、インプラントの耐用年数も15年ほどに伸びていますし、「再手術になってもいいから早く膝がスムーズに曲がるようにしたい」という考えの患者さんも増えており、近年、手術件数は着実に伸びています。
まずは手術を受けたいという患者さん本人の希望があり、その上で、家族の理解と協力も得ることが必要になります。そして、患者さん本人に内科的な疾患が無い場合に、人工膝関節置換術を行います。手術日が決まったら、事前に胸のレントゲンや血液検査、心電図、金属アレルギー試験など、全ての検査を外来ですませて、手術の前日に入院していただきます。検査の結果、心臓が悪かったり、脚の静脈に血栓があることが判明した場合には、手術を延期し、まずはこれらの疾患コントロールを優先します。また、手術の前にあらかじめ自己血を貯血しておきます。80歳以下の患者さんには、貧血がなければ400ccの血液を採って準備をします。
筋肉を切らないことで、回復のスピードや痛みの程度、膝の曲がり具合などが違います。
手術は、できるだけ皮膚や筋肉にメスを入れない、MIS(エム・アイ・エス:最小侵襲手術)で行っています。特に筋肉を切らないことが重要で、術後の回復のスピードや痛み、膝の曲がり具合などの機能回復が違います。なお変形性膝関節症は、片方の膝が悪いと、大体同じような進行でもう片方の膝も悪くなります。手術を受けることになった多くの患者さんは、大体両膝ともに悪いことが多いのですが、このような場合には両膝を同時に手術(両側同時手術)することもあります。両側同時に手術を行えば、2回麻酔をかけて2回入院するより、いずれも1度ですむため患者さんの負担が少なくてすみます。また、手術時間は通常の約2倍必要ですが、入院期間は片方の場合よりも約1週間多いくらいで、3~4週間で退院できます。その他、両方の脚の長さを揃えることが容易で、術後、より良いバランスで歩行することができるようになるのがメリットです。
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