専門医インタビュー
新潟県
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膝の痛みは、歳をとればだれにでも起こること。「それをいかに軽くすませ、自由に動き続けることができるかは、患者さん自身の自己管理。私たちはできるだけ多くの 情報を提案して、サポートするだけ…」と話すのは、100 年以上も前から地元の人たちの支えになってきた猫山宮尾病院の現院長・宮尾益尚先生。変形性膝関節症の治療法について伺いました。
変形性膝関節症のレントゲン
ヒトが歩く時、膝には体重の3~8倍の圧がかかっているといわれます。走ったりするとその何倍もの負担がかかります。加齢とともに膝の軟骨は相当くたびれて、すり減ってしまうのは避けられません。痛みが出て、軟骨下の骨や関節全体が変形していきます。また、激しく膝を打ったとか、体重の増加などがきっかけとなって、膝が痛くなることもあります。変形性膝関節症は、二足歩行である私たち人間の誰にでも起こる退行性疾患の一つです。
痛みの大きさは見えません。感じ方にも個人差がありますが、日常生活を脅かすような痛みがある、週に何度も長い時間痛い、今までに経験したことがないような痛みなどの場合は、整形外科を受診してください。実際には、家の中で家事はできるけれど趣味の旅行や社交ダンスができなくなったから何とか治したいと、受診する方が多いようです。
変形性膝関節症は、高齢者の日常活動性(ADL)と生活の質(QOL)を阻害する、たいへん多い原因です。代表的な症状は、運動時痛、動き初めに膝が痛くなります。関節内に水が溜まって腫れてくると、膝の曲げ伸ばしがしづらくなり、関節が硬くなって動きづらくなり、関節が変形していきます。
大腿四頭筋を鍛える
トレーニングを指導します。
整形外科では、診察、触診で痛みの度合いや、膝の曲げ伸ばしがどのくらいできるか、膝関節が硬くなっていないかなどを確認し、レントゲンで関節の状態を診ます。変形性膝関節症と診断がつけば、まず保存療法で経過を観察、痛みが出ないような方法をアドバイスします。痛みは体が発する危険信号です。痛い時には無理に動かそうとしないでください。痛みのつらさは本人にしかわかりませんから、自分で管理するしかないのです。体重のコントロールも含めて自己管理です。
もう一つ大事なのがリハビリテーションです。ポイントは、膝関節の稼働訓練、曲げたり伸ばしたり、足を持ち上げたりする大腿骨四頭筋の訓練です。筋力を鍛えるとい
うよりは、維持するようなトレーニング方法を指導します。そして、医師が提供するのが薬物療法。消炎鎮痛剤の外用、内服、座薬などを使い分けます。ヒアルロン酸の注射も有効です。自己管理とリハビリテーション、薬物療法が保存療法の3本柱ですが、医師が行うことができるのはさまざまな情報提供だけ。あとは、患者さんは自分自身が痛みを改善し自分の体を管理しなくてはなりません。
保存療法を数カ月継続しても改善しない、何とか痛みを取ってほしいと言う患者さんに提案する治療法が、手術療法になります。手術にもいくつかの方法が
あります。関節の状態が比較的初期の段階で、半月板の組織の傷みや軟骨の病変が痛みの原因になっている場合は「関節鏡視下手術」を行うこともあります。内視鏡を挿入して、関節内の損傷部位を修復したり、浮遊している破片や損傷組織を摘出します。
それだけで痛みが治まるケースもあります。中等度の病態には「高位脛骨骨切り術」もあります。日本人に多いO脚は、荷重が膝の内側によりかかるためにそこが
傷むので、骨を切って少し角度を変えることでO脚をまっすぐにする方法です。それでも痛みが改善できない進行期(末期)の変形性膝関節症の場合は、「人工膝関節置換術」の選択となります。患者さんの状態に応じて、いくつかの方法があることをまず知っておいてください。
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