患者さんストーリー
股関節
和田 武彦さん
静岡県在住
69歳(手術を受けた年齢)
病名 変形性股関節症(左足)
治療法 人工股関節置換術
定年後、明治の始め頃、曽祖父達が開墾した茶畑を受け継ぎ、奥さまと二人で守っている和田武彦さん。一時は股関節を含む腰全体の痛みのために茶摘みがつらく、夜も眠れないほどだったそうです。しかし変形性股関節症について自らインターネットなどで調べ、納得の上で人工股関節置換手術にトライ。いまでは民生委員としても活躍し、長年続けている趣味のゴルフや釣りも楽しまれています。「手術を受けることに対して恐怖心はなかった」という和田さんの手術前のご苦労、そして再び充実した毎日を取り戻すまでのお話を伺いました。
生まれながらの股関節脱臼(先天性股関節脱臼)でした。昭和18年生まれですから、戦前戦中で物資もなくて、いまのようにレントゲンを撮ることもなかったそうです。母が静岡の病院まで、満員の汽車の中をおぶって通ってくれたようですが、きちんと股関節がはまることがないまま大きくなりました。いまも正座はできますけれど、あぐらはかけません。
昔から走るのは得意じゃありませんでしたが、若い頃は筋力もあったので特に痛みもなく、普段の生活に困ることはなかったですね。山の中を駆け回って遊び、ソフトボールもよくしました。
大学では山岳部に入ってロッククライミングもしましたし、弓道もやりました。体を動かすのは好きでしたね。
ただ、体重を左足にのせようと思ってもできませんでした。股関節がしっかりはまっていなかったために、自分ではまっすぐに立っているつもりでも、どちらかに重心がずれていたようです。大学生のときも社会人になってからも、「背筋がまっすぐじゃない」と言われていましたから。
会社に入り、20代の後半に仕事のおつきあいでゴルフを始めました。おもしろくて、はまりましたね。
若い頃のスコアはベストで80くらい。いまは100を叩きますが(笑)。 広島、名古屋、静岡、埼玉、福岡、千葉と転勤ばかりでしたが、40歳をちょっと過ぎた頃に、ハーフで「祝!36」ということもありましたし、ホールインワンも2回経験しています。
まだまだ筋力があったからでしょうね、ゴルフでも痛みを感じることはなかったです。
お孫さんが拾ってきた茶の実
もともとうちは徳川の幕臣だったんです。徳川が崩壊し禄を失い、牧ノ原でお茶をやらないか、ということでお茶の栽培を始めたわけです。母親が茶畑をやっていたのですが、わたしも定年前に地元に戻ったのを機に、60の手習いで始めました。5反、つまり50アールほどの小さな茶畑ですから重労働というわけでもありません
4月下旬から5月にかけて「一番茶」ができ、摘み取ったら続いて6月に「二番茶」、7月中旬から下旬にかけて「三番茶」、9月に「秋番」と呼ばれる「四番茶」ができます。四番茶は一番茶を取るために刈り取ります。そして肥料をやったり、農薬散布などをしたら、11月から2月は 休眠状態です。
お茶は一度苗を植えたら30年は植え替えなくていいので、体さえ動けばそうきつい仕事ではないのです。ですが5年前、急に腰に痛みを覚えました。次の日はゴルフの約束がありましたが、断って市内の病院に行きました。医師からは変形性股関節症と診断されました。骨の頭の部分がスカスカで軽石みたいになっていて、MRIを撮ると軟骨もなくなってきている。「手術しないと治らんよ」と。
しかしすぐには手術をしませんでした。実際に手術を受けるまで5年かかっています。当時は、普通に暮らしている分には我慢できないほどの痛みではなかったんです。ゴルフをすると痛かったですけどね。
インターネットなどで調べてみると、当時の人工関節の耐用年数は15年ほどで、人工関節の入れ替え手術を行う場合もあると。65歳で手術をすると80歳まで持つ計算になる。私の父親は93歳まで生きましたから、再手術のことを考えると遅ければ遅いほどいいかなとも考えました。手術を受けることに対して恐怖心はなかったです。「技術を信頼するほかない」という領域の手術ですし、手術を受けてよくなったという知人もいましたからね。ただタイミングを待っていた。
ところが、手術を受ける1年前くらいから痛みが激しくなりました。日中は重たいものを持ったり、無理な体勢をとったりしなければ痛くありませんが、夜寝ていると、腰が痛くて、痛くて……。股関節も痛い。寝返りを打つだけでも痛くてしかたがなかった。お茶の仕事にも支障が出てきました。
刈り取りは、バリカンのような機械を妻と二人で持って、刈った茶葉を風力で袋に送って入れていきます。そして木を平らになるようにきれいに揃えるんです。これを「ならし」と呼ぶのですが、一人は後ろ向きの体勢で進んでいかなくてはならない。だんだん重たくなっていく袋をかつぐのは大丈夫なんですが、枝を揃える作業がつらくなってきました。きつくて動けない。腰や股関節も痛い。つらくて左足に力が入らない。平らに刈らなくてはいけないのに、バックする際、左足に体重がかかるときに体を支えられずにガクッと下がり、木が波打ってしまうのです。これではこの先、お茶の仕事は続けられないだろう。それで手術を決意しました。
著名なプロゴルファーのトム・ワトソンが人工股関節を入れたと聞いたこともきっかけのひとつです。私も手術を受けたら、まだまだゴルフを続けられるかな、という思いもありました。ただ手術を受けるなら、症例数の多い病院のほうがより安心だろうと、いろいろ調べました。そしてかかりつけの内科の先生から「友人がここで手術してピンピンしているよ」と紹介していただいた病院でお世話になることにしたのです。昔は手術の傷口も大きかったようですが、いまは半分ほどと小さくなっているし、手術した翌日には歩行器を使って歩くという説明を受け、手術に臨みました。
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