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専門医インタビュー

角谷 真 先生|目指しているのは痛くない、出血しない、回復も早い手術方法

この記事の専門医

東京都

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東京医科大学卒業。日本整形外科学会専門医、英 OXFORD 人工膝関節片側置換術マスター

この記事の目次

人工膝関節は歩くための手術

股関節唇損傷

変形性膝関節症には、最終的に人工膝関節置換術という治療法があります。
多少の痛みがあっても日常生活は何とかできるけれど、今まで続けてきた趣味や生きがいをやめたくないから、人工膝関節にしたいと希望する人もいます。
この手術は、全く歩けなくなってしまった人を歩けるようにするものではありません。若返りの手術ではないのです。痛いけれどまだ歩ける人、歩くのをやめたくない人のための手術です。
膝の痛みのために、やりたいことを我慢してあきらめたくない人には、お勧めしています。今の人工膝関節は、20 年以上の耐用年数がありますから、元気なうちに手術をして、残りの人生を生き生きと送ってもらいたいと考えます。

筋力を落とさない、虫歯は治す

変形性膝関節症のレントゲン

手術を受けると決めた患者さんには、「できるだけ今の筋力を落とさないようにしてください」「無理に階段の昇降はしなくてもいいけれど、平地はどんどん歩いてください」「でも転ばないように注意して」と話しています。もし骨粗しょう症で骨がもろくなっていたら、骨が人工膝関節の金属部分と摩擦して折れてしまう可能性もありますから、同時に骨粗しょう症の治療を行います。リウマチの人もステロイド薬の影響で骨がもろくなっていますから、骨を作り強くする治療も同時進行で行います。
もう一つ大事なのは、虫歯や歯周病の治療をきちんと済ませておくことです。手術後、自分が保有している菌が体内を巡って人工膝関節の部分まで行き、炎症を起こしてしまわないようにするためです。人工膝関節置換術で特に怖いのが、この感染です。患者さんにはどんなものが自分の膝に入るのか、人工膝関節を実際に手に持ってもらい、それなりの覚悟もお話ししていますが、重い病気をたくさん抱えているなどの人以外は、たいていの場合は受けることができます。

術前の準備は、一人一人に設計図を作ること

まず、個々の患者さんに対してどういうやり方で、どういう角度で、どこからどう人工膝関節を挿入したらいいかなど、一人一人に適切な方法を考えて設計図を書きます。
人が立ったときの重心は、股関節の中心から膝の真ん中を通って足首、足の人差し指のあたりまで、まっすぐ通るのが理想の姿です。膝が悪いと、その重心が狂って無理をするから痛みが出るのです。手術では、O 脚がきちんとまっすぐになるように調節し、人工膝関節を挿入します。
人工膝関節は大腿骨と、脛の骨を包み込むように挿入し、そのつなぎ目に関節に替わる人工のものをはめ込むものです。傷んだ関節の表面をきれいに削って平らにし、そこに金属の人工膝関節をはめ込みます。手術は、できるだけ痛みなく、余計な出血がないように行うのが医師の腕の見せ所。人工膝関節置換術は、骨を切るだけではありません。痛いところを取り除いて、膝のじん帯の左右のバランスを整えます。膝を伸ばした時に内側のじん帯が伸びなければ痛いし、あまり緩いと歩けません。そのバランスをちょうどよくするのが、人工膝関節置換術です。

手術方法にこだわりがあると伺いましたが?

私が目指すのは、膝が正座できる位良く曲がるように、そして手術後の痛みがない手術です。この2点に気を付けて手術の方法を工夫しています。基本は低侵襲の手術方法ですが、表面の傷口の大きさは痛みとはあまり関係ありません。痛くない手術方法、ここに独自のこだわりがあります。
私の手術では、輸血は必要ありませんから、あらかじめ自己血もとりません。出血がほとんどない方法なのです。中は縫いますが、表面はテープを貼るだけ、傷口もきれいに治りますし、抜糸の痛みもありません。
手術の翌日には頭からシャワーをかぶっても大丈夫。入浴もできるし、翌日には病院内を歩いてもらっています。特別なリハビリではなく、歩いたり、階段の昇降の練習を続けて、日常生活がスムーズにできるようになってからの退院となります。
入院は1週間〜2週間です。感染を防ぐという意味からは、退院が早いことがいいのかどうかは分かりませんが、私は自分がもし手術を受けるとしたら、どうしてほしいかということを一番に考えています。


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