専門医インタビュー
神奈川県
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人工股関節にゆるみが生じて、骨がどんどん減っている状態
明らかに人工股関節にゆるみが生じて、骨がどんどん減っている状態を放置していると、最終的に歩けなくなり、寝たきりになってしまうこともあるのです。そういう危険性が迫っていると判断した場合には、医師の強い決意で再置換術を勧めています。
ただ、患者さん本人に痛みなどの症状がなければ、なかなか再置換術に踏み切る決心がつかないのも事実でしょう。丁寧に検査を積み重ねながら、3年越しでやっと再置換術を実施したケースもあります。状態が悪化してしまう前に再置換術を行う方が、手術後の成績が良いのは確かです。早めに症状が分かれば、一部分だけの交換や患部の治療だけで済む場合も多く、症状が出るのを待っていては遅すぎることもありますから、再置換術を行うタイミングは非常に大事だと思います。手術は受けるタイミングが大事で、手術後の回復度に大きく関係してきますので、あまり先延ばしにしない方がいいと考えています。
再置換術に使用される製品の一例
下部フランジは坐骨内に差し込まれ、上部フランジは腸骨上にネジで取り付けられ寛骨臼の骨欠損部を架橋して人工寛骨臼を形成します
人工股関節に不具合が見つかったら、まず感染があるかどうかを確認します。感染がなければ、大腿骨側に埋め込んだ人工股関節(ステム)は残して、骨頭や骨盤側の受け皿となるカップの部分を取り換えるだけで済むこともあります。
人工股関節がゆるんでいるか、それほどゆるんでいないかを確かめるのも重要です。ゆるんでいなければ、一部分を修理したり、部品の交換をすればいいのです。たとえ人工股関節の破損があっても、状況によってそれぞれ手術の方法は変わりますから、正確に状態を見極めることが大事でしょう。今は難易度の高い手術を支える製品も揃ってきていますので、患者さんの状況に合わせた手術が可能です。
はい。まず大腿骨側にしっかり埋め込まれている人工股関節(ステム)を抜き取らなくてはなりません。そのためには、骨を削る必要があります。特に、大腿骨と強固に固着しているステムは、大腿骨を割らないと取れません。骨を割るということは、出血も多くなるし、手術の時間もかかり、感染の危険性も生じてきます。
再置換術を行う際に、人工股関節を固定するための骨がなくなっていることが多く見られます。他の部位から自分の骨を取ってきて移植することは可能ですが、余分な骨など無いので、取った部位に機能障害を引き起こしたり、出血や痛みを生じたりすることになります。そこで、自分の骨のようにはつきませんが、冷凍保存した骨を移植する方法があります。この方法は古くから行われており、長い年月がかかりますが、自分の骨におきかわって行きます。
再置換の手術後に感染症や脱臼を起こすというトラブルが発生するリスクは、初めて人工股関節置換術を受ける場合に比べて10倍くらいあると思っています。入っている人工股関節の種類が分からないことも多く、再置換の手術の難易度は高いのです。また、既往症(糖尿病、心疾患など)がある場合は、それらをコントロールして手術にのぞみます。
通常の人工股関節置換術は、約1時間ですが、再置換術には5時間くらいかかることもあります。当然、患者さんの負担も大きくなります。しかし部品を交換するくらいの手術なら、そんなに大手術になることもありませんし、2週間で退院する人もいます。ですから、できるだけ全部を入れ直すのでなく、一部分を取り換える程度の手術で済むように、早めにチェックする必要があるのです。
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