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専門医インタビュー

圧倒的に女性に発症しやすい変形性股関節症 負担が少ない「前方アプローチ」の人工股関節置換手術で回復を!

この記事の専門医

  • 五十嵐 達弥 先生
  • 札幌いがらし人工関節クリニック 理事長
  • 011-761-1187

北海道

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北海道大学医学部卒、北海道大学医学部大学院博士課程卒。社団法人日本整形外科学会認定整形外科専門医、医学博士。
得意分野:人工股関節、人工膝関節、ACL、肩肘疾患

この記事の目次

人工股関節置換術について詳しく教えてください。

人工股関節の一例

人工股関節置換術は、変形した骨頭を取り除き人工の股関節に置き換える手術です。股関節は、金属製の「ステム」を大腿骨に埋め込み、骨盤の側に受け皿となる「カップ」を固定し、その間に軟骨の役割をする高分子量ポリエチレンの「ライナー」と骨頭の代わりになる金属製のボールの形状をした「ヘッド」を収めて置換します。人工股関節置換術は日本国内で30年以上前から行われている一般的な治療法で、手術件数も年間5万例以上に上りますが、高齢者の中には体の中に金属を入れることに抵抗を持っている人がまだまだ多いと感じています。中には、「人工関節にすると股関節が動かなくなる。歩けなくなる」などと思い込んでいる人もいますが、それは全くの誤解で、人工股関節置換術は患者さんの満足度が非常に高い手術です。術後はこれまで長い間悩んでいた痛みが劇的に取れるため、買い物や旅行、スポーツなど、日常生活の幅が一気に広がります。中には新たな趣味を見つけ、「もっと早く決断すればよかった!」という人もいます。現在は人工股関節の材質や性能が格段に上がっており、手術手技や取り巻く環境も良くなっていますので、頭から否定するのではなく、まずは担当の医師に詳しく話を聞いていただきたいと思っています。

人工股関節置換術には、いくつか切開方法(アプローチ)があると聞きました。

筋肉を切らない前方アプローチは
痛みが少なく回復もスムーズです

人工股関節置換術には複数のアプローチがあります。主なアプローチとして、大腿部の後ろ側から切開する「後方アプローチ」、真横から切開する「側方アプローチ」、やや前から切開する「前側方アプローチ」、そして太ももの前方から切開する「前方アプローチ」があげられます。それぞれのアプローチにはメリットとデメリットがあります。後方アプローチは昔からある方法で、20cmほど切開して行うため視野が良好、医師による経験値の差が出にくいという特徴があります。ただ後方の筋肉を切るため、人工関節が脱臼しやすいなどのデメリットがありました。一方で、当院が採用している前方アプローチは、皮膚は約7cm~8cmの切開で中臀筋の前にある大腿筋膜張筋と縫工筋の間をより分けて人工関節を挿入していくので、まず筋肉を切ることはありません。手術時間は片脚で約30分、両脚でも1時間弱で済みます。また、筋肉を切らないため体の負担が少なく、術後の経過がスムーズで回復のスピードが速いというメリットがあります。実際に以前に他のアプローチで手術を受けたことのある患者さんに聞いたところ、前方アプローチの方が術後の痛みも少ないようです。もともと臼蓋は身体の前の方に向いて開いており、大腿骨も前面に向いているので、前方から切開して手術をするというのは理にかなっていると考えています。

手術は誰でも受けられるのでしょうか?

狭心症・心筋梗塞・心不全などの心臓病がある場合は、先に心臓の評価をしてから手術を行います。また糖尿病の場合は、血糖値をチェックした上で、インスリンを適宜使用しながら手術をすることがあります。術後の合併症で一番怖いのは感染症ですが、糖尿病は細菌に弱く感染症になりやすい傾向があります。細菌が付いてしまうと、折角入れた人工関節を取り出して洗浄し、もう一度入れ直す手術を行わなければなりません。その他、尿路感染や肺炎などの基礎疾患がある場合も手術を見合わせることがあります。なお、手術前には医師から「インフォームドコンセント」と呼ばれる術前説明がありますが、手術のリスクについてはそこで患者さんやご家族に対してしっかりと説明し、コンセンサスが得られた場合にのみ手術に臨みます。手術に際し年齢制限は基本的に設けていませんが、手術は全身麻酔で行うため、身体への麻酔の影響には留意します。高齢者の場合は全身状態に注意しながら手術を行っていきます。一方で活動性が高い30代~40代の人の場合は、人工関節の耐久性から将来的に入れ替え手術が必要になる可能性があることを説明し、手術を行っています。


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