専門医インタビュー
リハビリ室の風景
以前は何ヶ月にも渡ってリハビリをするよう指導されていましたが、現在は入院中に行う短期間のリハビリが重要だと考えています。主な流れとしては、翌日から座位でリハビリをスタートし、2日目には立って歩行、2週間のうちに一本杖で安定歩行ができるように訓練します。後は自宅でできるリハビリの方法を覚えてもらって、退院後も続けていただきます。人に無理やりリハビリをされると痛みを感じる人もいるので、自分でできるリハビリを勧めています。手術では膝を切っていますので、最初は誰しも痛みがあります。また、体内に異物が入っていることで、不安を感じる人もいます。その痛みや不安がリハビリを妨げることもあるので、術後の2日間は軽い麻酔をかけ、痛みを取った上でリハビリを行います。麻酔は「めまい」や「ふらつき」が出るため、歩行訓練が始まってからは、随時、消炎鎮痛剤を使って痛みをコントロールしながらリハビリをしていきます。短期間で大きく回復すると、退院後の生活への大きな自信になるようです。実際、「家に帰る自信がついたので早く帰りたい」という患者さんもたくさんいらっしゃいます。
歩行訓練は車イス→平行棒→歩行器と進み、一本杖による訓練に移行します
術後は定期的に検診を受けていただき、人工関節の状態をチェックしていきます。異物が入っているのですから異物反応が出る場合もありますし、感染にも十分気をつけなければなりません。退院後、最初の1年は1ヶ月に1回、その次の1年は2~3ヵ月に1回、それ以降は半年~1年に1回のペースで経過を観察していきます。女性の場合は、年齢とともに骨粗しょう症になりやすい傾向があるので、骨の強さをチェックして必要に応じて骨を強くする薬を処方します。
ゴルフや体操などの運動は、どんどん行ってください
せっかく一大決心をして手術をしたのですから、日常生活に制限を設けてしまうのは、つまらないと思います。患者さんには、「できることは何でもしていいですが、不安に思うことは相談をしてください」といっています。ゴルフ、体操、ウォーキングなど軽い運動は、ぜひ行ってください。筋力がつきますし、身体も丈夫になります。ただ、骨折の危険があるコンタクトスポーツ、膝への衝撃が強いジャンプ系スポーツやジョギングは避けた方がよいでしょう。高知は第一次産業が盛んで、術後に復帰して農業をしている人も多くいらっしゃいます。山に住む人も多く、急斜面で農作業をされる方もいます。農業をされる人は、ケガと感染に気をつけてください。患者さんが、「スポーツをしていいですか?もうしていますけど」と笑顔を見せてくれたり、「こんなことができるようになった」と農作業の写真を撮ってきてくれたりします。痛みがなくなり、「旅行に行ってきた」、「仕事ができるようになった」と聞くのがとてもうれしいですね。
まずは、痛みをあきらめないでください。日常生活に支障をきたしている場合は、早めに専門医を受診して下さい。手術だけが治療法ではないので、話し合いの上で自分に合った方法を選ぶことができます。「痛みさえなければ手術はしたくない」という患者さんには、痛みをコントロールする治療もあります。要介護や寝たきりは、本人だけでなく家族など周囲の人にとっての問題です。あなたの大切な家族や友人のためにも、自立歩行で健康寿命を長く、要介護や要支援にならない生活を送りましょう。痛みを取るのに手術は大変有効ですが、手術ですべてが元通りになるわけではありません。頑張って歩いているうちに筋力が付き、痛みなく歩行できるようになります。術後すぐに良くなる部分と半年くらいで良くなる部分があるので、あまり焦らず気長に頑張っていきましょう。
なお、治療を受ける施設を選ぶ際、多くの人が手術件数を基準にされるのではないでしょうか?しかし術前だけではなく、術後も主治医と長い付き合いになる人工関節置換術では、件数よりも自分に合う病院・医師かどうかが大切です。迷う場合は、いくつかの医療機関を受診されるのも良いでしょう。じっくり話をして、納得のいく施設を選んでください。
ページの先頭へもどる
PageTop