専門医インタビュー
埼玉県
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手術直後から積極的に歩く
よう指導しています
インプラントをどれほど正確に設置しても、筋肉を使っていないとすぐに衰えてしまいます。従って、衰えた筋力をいかに取り戻すかが、手術後には一番大切です。術前の時点で、筋肉が十分残っている人の方が、回復が早いのは間違いありません。午前中に手術をした人は、手術当日からリハビリを開始することもありますが、基本的には手術の翌日から開始します。中には驚かれる患者さんもいますが、これは手術の合併症の一つである「血栓症(いわゆる、エコノミークラス症候群)」を防ぐ意味もがあります。また早く自力で歩けるようになれば患者さんの自信に繋がることもあり、手術直後から積極的に歩くよう指導しています。その後は、病棟の中や外での歩行訓練や階段の昇降訓練、自転車に乗る練習などを行い、杖をついて歩けるようになれば退院です。
人工関節専従のスタッフによる
術後リハビリ
入院期間は一般的には2~3週間ですが、4日くらいで帰る人もいます。反対に、変形が強くて歩けない、車椅子で入院したような人は2~3カ月かかります。個人差もありますが、退院後1か月くらいは杖を使っている人が多いようです。退院後は、1カ月、3カ月、半年、1年後と、定期的に検査のために受診して、人工関節が緩んでないか、腫れていないかなどのチェックを受けていただきます。なお、長い間痛みがあった人は筋力がかなり衰えており、入院時のリハビリだけで筋力がつくわけではありません。退院後は自分でもリハビリを続けてもらわなくてはいけませんので、自宅でできるリハビリメニューを退院時に渡しています。毎日頑張って筋力を回復していけば、デスクワークの人なら手術後1カ月ほどで仕事に復帰が可能です。軽作業の方は1カ月半から2カ月くらいかかっているようですね。
テニスはダブルスであれば問題ありません
人工股関節置換術の場合、前方から切る方法はしゃがみ込む姿勢に強く、後方から切る方法は反りかえる姿勢に強い、という特徴があります。当院では、例えば、農家の人でしゃがむ姿勢をとることが多い場合には前方からアプローチしますが、普通の人であれば後方からなど、患者さんの生活様式に合わせて手術の方法を選んでいます。ただ、前方・後方いずれのアプローチで手術をしても、和式トイレやしゃがむこと、正座なども含めて、特に姿勢の制限はしていません。普通の生活をする上であれば何も問題はないと考えています。激しいスポーツはあまり推奨できませんが、テニスのダブルス、水泳、ゴルフ、卓球などをしている人はたくさんいます。また、長い年月、股関節に同じような強い負荷がかかると、ポリエチレン部分が早くすり減ることもあります。体重が重い人、肉体労働、あるいは両側の股関節が悪い人は、すり減り方が早いかもしれません。当然ですが、痩せた人の方が負荷は少ないため、退院後は適度な運動を勧めていますが、毎日30分ジョギングをするなど、同じ動作で同じ負担をかけるのは避けた方がいいでしょう。
人工股関節置換術は、患者さんの満足度が極めて高い手術です。まず、痛みが劇的に取れますので、買い物に行ったり、旅行に行ったりなど、日常生活でできることが一気に増えます。中には人生が変わったとおっしゃる人もたくさんいますし、実際に人工関節にしたことを忘れて生活している人も多いのではないでしょうか。以前に比べると、人工股関節置換術は手術の確実性と安全性が格段に上がりました。人工股関節の耐久性も20年以上と大きく伸びています。変形性股関節症は、遺伝的な素因が強いといわれていますから、「親子三代で股関節が悪いので、仕方がない」と諦めてしまう人もいます。また、大昔の人工関節の印象を引きずっており、はなから手術を怖がり手術時期を逃している患者さんも中にはいます。しかし重要なのは、どこが悪いのか・痛みや不具合の原因は何かを正しく診断してもらうことです。股関節の痛みが強く生活に支障が出ているのであれば、積極的に人工股関節置換術を検討してみてください。手術は、症例数が多く人工股関節置換術に慣れている医師がいる施設が良いでしょう。人工股関節置換術を通して、より快適な日常生活を手に入れられることを願っています。
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