専門医インタビュー
埼玉県
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人工股関節置換術を行う日が決まったら、手術前に、①全身の健康状態の把握するための検査、②自己血の採取、③股関節周辺のCT撮影と3次元シミュレーション、④麻酔科の診察―この4つを行います。まず、手術を行うにあたっては全身状態が健康かどうかを確かめなくてはなりませんので、外来で健康診断のような検査を行います。そして、予め患者さん自身の血液を400cc~800cc程度採取しておきます。もし術中に、出血が多くて輸血の必要が出た場合、採取した自己血を使用します。その後、3次元的な術前シミュレーション(3Dテンプレート)を行い、手術には全身麻酔と硬膜外麻酔を併用するので、麻酔科の医師の診察を手術前に受けます。
ß3次元テンプレートの画面と股関節の立体モデル
術前に詳細な3D-CTを撮影し、そのデータをもとにして、どこをどう切って人工関節を挿入すればいいか、もう片方の脚の長さときちんと揃えるにはどう切ればいいか、この患者さんにはどの種類のどのタイプの人工股関節が適当か、などの手術計画を作成します。2次元のレントゲン画像では、実際の奥行きなどが掴みにくいので、PC上で3次元的に表すことによって、より正確な手術が期待できます。人工関節を正確に設置することで、確実に痛みを取り除くことができ、また左右の脚の長さを適切に揃えることができるため、人工関節の耐久性が向上し、術後成績がさらに安定すると考えています。当院では、年間250例行っている人工股関節置換術の全てのケースで、この3次元シミュレーションを行っています。また、難易度の高い症例の場合は、3Dプリンタを使用して、立体的な関節模型(骨モデル)を作ることもあります。関節の変形が強くて、複雑な手術になることが予測される場合、人工股関節をより正確に挿入するために立体的な関節模型を作ってシミュレーションに活用しています。
手術は、できるだけ筋肉を切らずに小さな切開で行う「MIS(最少侵襲手術)」で行います。美容的にも傷は小さい方がいいのですが、それ以上に、筋肉を切らないことで術後のリハビリが早く進み、早期回復・早期社会復帰が可能になり、また脱臼のリスクも少なくなります。手術時間は片脚で40分~45分程度、傷口は7~8センチしか切りません。また、股関節は両方とも悪くなる人が多いので、両脚を一度に手術することもあります。手術時間は倍必要になりますが、入院期間は伸びてもプラス1週間でしょう。何より手術が1回ということは、入院も1回、麻酔も1回で済みます。最近は、高齢の人の手術も増えていますから、両方の股関節が悪い場合は、できるだけ手術は1回で済ませる方がいいのではないかと考えています。
特殊防御服を着用しての手術風景とナビゲーションの画像
人工股関節置換術を受けるのは、女性が男性の5倍くらい多く、60代~70代の人が中心です。全身の健康状態がいいということが、手術を受ける際の条件になりますが、60歳にもなれば多くの人は何らかの疾患を抱えていますので、他の診療科と連携を取りながら手術を行っています。
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