専門医インタビュー
愛媛県
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最近は「マルチモーダルペインコントロール」といって、術後の痛みをできるだけ抑えるための様々な工夫がされています。例えば、痛みを抑える薬を複数混ぜたものを膝関節の周囲組織にカクテル注射し、術後には持続的に点滴から痛み止めを注入します。また、できるだけ手術を短時間で終えることは、術後の痛みや腫れを抑えるだけでなく合併症リスクの軽減にもつながります。このように従来と比べると、薬の種類だけでなく色々な痛みをコントロールする工夫や手術方法も進歩していますので、術後早期からリハビリを行いやすくなっています。
人工膝関節置換術を受ければそれで終わりではなく、膝を動かすための筋力強化や周りの組織が固くならないようにするにはリハビリテーションが非常に大切です。しかし、闇雲に行うと膝の腫れや痛みが出るので逆効果です。可動域訓練や筋力トレーニングを中心とした基本的なプログラムはありますが、年齢、筋力や可動域といった患者さんの状態だけでなく、畑仕事に戻りたいゴルフを楽しみたいと患者さんが目指す目標も異なります。そのため医師だけでなくリハビリを担当する理学療法士や作業療法士など様々な分野のプロフェッショナルの技術を集約して、患者さん一人一人の希望を叶えられるようにオーダーメイドのリハビリを行っていくことが重要だと思います。
リハビリは入院期間中だけでなく、退院してからも歯磨きなどと同じように、毎日、大腿四頭筋という太ももの筋肉や太もも内側の内側広筋を鍛えるトレーニングを行ってほしいと思います。また、人工関節が入っている土台となる骨を丈夫にすることも大切です。骨粗しょう症にならないように、しっかりと歩く運動習慣をつけ、食事に気を付けたり日光に当たったりすることも骨粗しょう症の予防には大切なことです。
現在は医療が進歩しているので、適切な治療を受けることで膝の痛みの改善が期待できます。手術を受けることは勇気が要りますが、治療をためらっているうちに筋力が弱くなったり可動域が悪化するなどデメリットのほうが多いかも知れません。
人工膝関節の手術を受けて旅行やゴルフなどのスポーツを楽しんだり、農業に従事する患者さんが沢山おられます。一方で術後に痛みが残存する場合の原因として、もともと筋力が少なかったり腰の神経が悪くなっていたりすることもあります。
痛みを軽減させるだけでなく筋力や可動域を維持するために、日頃の自己トレーニングやケアが大切になります。ご自身の人生を豊かにするためには、医師からしっかりアドバイスを受けて病気とうまく付き合っていくことが重要なことだと思います。専門医としっかり相談をして、ご自身にとってより良い治療を選択していただきたいと思います。
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