専門医インタビュー
福島県
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一定期間、痛み止めなどの使用や運動療法などの保存療法を行っても痛みが改善しない場合、手術が選択肢になることがあります。手術には、股関節鏡視下手術や骨(こつ)切り術、人工股関節置換術があります。
股関節鏡視下手術は、学会による技術認定制度のもと限られた整形外科医によって、FAIによる股関節唇損傷や股関節内異物除去などを対象に手術が行われています。手術は患部にカメラや治療器具などを入れて行いますが、傷口が小さく筋肉などのダメージも少ないので、手術後早期の回復が期待できます。変形性股関節症に対して行う代表的な手術には、骨切り術と人工股関節置換術があります。骨切り術というのは、主に寛骨臼形成不全をお持ちの方で、それほど軟骨や骨が損傷していない時期に、骨を切ってずらすことで、かぶりを矯正する手術方法です。骨が癒合するまでに期間を要しますが、ご自身の股関節が温存できるので、高い活動性を求められる方や人工関節の手術を先延ばしにしたい方などが良い適応ではないかと思います。
人工股関節置換術は、傷んでいる部分の股関節の骨を取り除き人工関節に置き換える手術です。昔は、人工関節の耐久性や脱臼のリスクから、適応は70歳以上と言われていました。現在は人工関節の耐用年数が以前よりも向上していることや手術方法も進歩しており、比較的若い方でも人工股関節の手術を希望される方が増えています。また、元気な高齢者も増えていますので、全身状態に問題がなければ、90歳以上の方でも人工関節の手術を行うことがあります。
股関節の手術方法は様々ありますが、手術を受けてから仕事やスポーツなどに復帰できる期間やリスクなどをよくご理解いただき、ご自身の今後のライフプランにあった納得できる治療法を決めていただきたいと思います。
股関節鏡視下手術
骨切り術
人工股関節置換術
人工股関節置換術後のX線
簡易ナビゲーションの一例
人工股関節の合併症のひとつに脱臼があります。この合併症を防ぐには、人工股関節がその方にとって適正な角度と位置で設置されていることが重要だと考えます。手術前には、CT画像をもとに3次元の骨モデルを作成して、どのくらいの角度や量の骨を切れば適正な位置に人工関節が設置できるのかを計画します。人工関節を挿入する際には、手術中に術前計画通り正確に骨を切り、簡易ナビゲーションなどを使って人工関節を適切な角度で設置し、さらに術中に脱臼しないかどうかをしっかり確かめます。MIS(Minimally Invasive Surgery:最小侵襲手術)という術式を使って、筋肉や靭帯の損傷を最小限にして筋力低下が起こりにくいように努めます。結果として、傷口が10㎝程度と小さくなります。ご高齢の方に対しても人工関節の手術を行うことがありますが、どうしても術後の合併症リスクが高くなります。手術は麻酔をかけて行うので、麻酔科医がそのリスク評価を行い、他科の医師と連携して何かあれば迅速に対応できる体制を取ります。
たいていの方は、手術翌日にはベッドから離床でき、リハビリも早くから始められると思います。手術後のリハビリはとても大切で、スタッフが充実している施設であれば、入院期間中にしっかり指導を受けリハビリを行うことができると思います。スムーズにリハビリが進めば、10日から3週間で退院される方もいらっしゃいますが、中には、もう少し時間をかけ、自信がついてからの退院を希望される方もいらっしゃいます。病院によっては手術後2~3週間でリハビリテーションのために転院する場合があります。
脱臼しないとは言い切れませんが、正確な人工関節の設置と脱臼しにくい術式で行えば、特に行動や姿勢を制限する必要はなく、手術後、登山やテニスを行われている方もいらっしゃいます。人工股関節の手術は、痛みの軽減だけでなく、元の生活に早く戻れるというところが大きな利点なのだと思います。
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