専門医インタビュー
痛みや悩みを抱える患者さんにとって、きめこまかな対話は治療以上に不安を和らげてくれるものではないでしょうか。「患者さんの価値観やライフスタイルはお一人ずつ違います。それをうかがった上で治療方針をいくつか提案し、患者さんと一緒に納得できるものを探すのが医師の役割です」と言われる聖マリアンナ医科大学病院の葛西亨先生に、股関節の疾病についてうかがいました。
寛骨臼形成不全
代表的な疾病としては、変形性股関節症があります。立ち上がる時や歩き始め、階段を降りる時などに痛みを生じやすく、股関節だけでなく、膝や太ももなどにも痛みを感じることがあります。日本人の場合は特に女性に多い疾病で、原因の約8割が股関節の発育障害である寛骨臼(かんこつきゅう)形成不全です。これは骨盤のくぼみ(寛骨臼)が浅いため、太ももの骨の先(大腿骨頭(だいたいこっとう))を十分に覆えず、一部に過度な負担がかかっている状態です。その結果、年齢とともに軟骨が摩耗しやすく、痛みや動きにくさといった症状となって表れます。その他に、膠原(こうげん)病などに使われるステロイド治療の影響で骨頭が壊死(えし)する、大腿骨頭壊死症などがあります。
貧乏ゆすり
一般的には、保存療法から始めます。痛み止めの薬などを使用し痛みを抑えつつ、股関節を支える筋肉をつけたり関節の可動域を広げたりする運動療法を行います。運動療法は、中殿筋(お尻の横の筋肉)を維持するエクササイズや、1日の合計が約2時間程度の貧乏ゆすりが有効だとされています。また、股関節への負担を軽減させるために、ダイエットや杖を使用する場合もあります。こうした保存療法だけで、長年にわたり変形股関節症とうまく付き合っている方もおられます。
しかし、痛みが軽減しないために、家事や日常生活に支障が出る、散歩や趣味の登山を諦めなければならないほどであれば、手術を考えてみても良いのではないでしょうか。
骨切り術
代表的な手術には、骨(こつ)切り術と人工股関節置換術があります。比較的年齢が若く、変形が軽度で軟骨が残っていれば、骨切り術といって、骨盤を切り形を変え、骨頭がしっかり骨盤にはまるように調整する方法などがあります。ご自分の関節を温存できますが、骨が癒合するまでに時間がかかるといった特徴があります。また、人工股関節置換術は、傷んだ部分を取り除き、人工関節に置き換える手術で、術後早期から痛みが軽減し、社会復帰が早いという特徴があります。
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