専門医インタビュー
東京都
プロフィールを見る
この記事の目次
大きく分けると保存的療法と手術的療法があります。保存的療法では、体重のコントロール、リハビリ、お薬などを使った方法が一般的です。また運動方法や靴の選びかたといった日常生活指導を行うこともあります。痛みや変形の程度によっても効果は変わってきますが、これらの方法で症状が改善する方も少なくありません。
一方、保存的療法でも改善がみられない方、症状が進行期~末期で生活に支障をきたしている方は手術的療法が選択肢となります。変形性股関節症といった軟骨がすり減って関節が変形している場合には人工股関節置換術が多く実施されています。
治療を進めていく上でのアドバイスとして、リハビリや待合室で一緒になった方などと情報交換することが有効だと思います。通院されている方は、同じ疾患で悩んでいる方も多く、治療を始められた方もいらっしゃれば、手術をされた方もいらっしゃいます。そのような方々から治療内容やリハビリでの状態を聞くことで、治療へのモチベーションが上がったり、次の治療へのヒントが得られるかもしれません。
人工股関節置換術は後からもご紹介しますが、痛みの改善や早期の社会復帰を期待できるなどメリットがある一方で、合併症などのリスクも存在します。また手術は受けて終わりではなく、手術前後のリハビリがとても重要で手術される方の気持ちやモチベーションも深く関わってきます。ご自身の症状やライフスタイルに合わせて、ご自身のタイミングで決断いただく手術になりますので、納得して治療を進められるよう、不安なことは医師によく相談するようにしましょう。
人工股関節置換術
関節の傷んでいる部分を取り除き、金属やポリエチレンでできた人工関節に置き換える手術です。除痛効果に優れていて、関節のスムーズな曲げ伸ばしを期待することができます。
ひと昔前までは、手術方法が確立されていなかったこともあり、手術は60歳になるまで待ちましょうといった治療方針が主流でした。現在では、人工関節の素材やデザイン改良により耐用年数が大きく延びたこと、また手術における技術の発展により、それ以前の40代、50代でも手術を受けられるケースが多くなっています。もちろん手術をして何らかの不具合が生じた際には再置換の可能性がありますが、変形性股関節症に特に悩んでいらっしゃる世代の方にとっては、より治療を進めやすい環境が整ってきていると感じています。
MIS(Minimally Invasive Surgery)とナビゲーションシステムがあげられます。MISは最小侵襲手術と呼ばれ、切開をできる限り小さくすることで、皮膚や筋肉、靭帯へのダメージを最小限にする方法です。股関節は多くの筋肉、靭帯で支えられていますが、人工関節を設置するためには筋肉の中を進入する必要があります。しかし、筋肉を切ってしまうと手術後の回復が遅れたり、関節の安定性が低下することで人工関節の脱臼といった合併症のリスクをともないます。MISではこれらの組織へのダメージをできる限り減らすことで、早期の回復と安定性の維持を期待することができます。また皮切も従来の方法と比べて小さいので、手術後の傷口が目立ちにくいという点もメリットです。
ナビゲーションシステムは、患者さん一人ひとりの股関節の病状に合わせて手術を行う手術支援システムです。術前計画では患者さんのレントゲン・CT画像をもとに骨を切る位置や角度、設置する人工関節のサイズなどを確認します。手術中は、手術箇所と手術器具の位置関係をモニターで確認することができ、計画通りに人工関節の設置を行うことが可能です。
手術は麻酔をかけた状態で行うので痛みは感じませんが、骨を削ったり皮下組織・軟部組織を切開したりするため手術後数日間程度の痛みを生じます。股関節の痛みは手術直後から取れ、翌日からは筋肉痛と腫れが主体の痛みに変わります。その痛みへの対策の1つとして、手術中から手術後にかけて股関節に点滴を通し、痛み止めを持続的に投与する方法があります。ご自身が痛いと感じる時にも痛み止めを調節して投与することができ、痛みを抑えた状態でリハビリを進めることが可能です。
一般的な合併症として感染症、手術後の人工関節の脱臼・ゆるみなどがあります。感染症を起きないようにするためには、手術を計画的に短い時間で終わらせることが大切です。人工関節の脱臼・ゆるみについては、適切な位置に人工関節を設置することで股関節がより安定し健康な状態を維持できると考えています。いずれも先ほどご紹介したナビゲーションシステムの普及などにより対策は強化されてきていますが、手術中・手術後ともに問題がないかどうか慎重に経過をみていく必要があります。
ページの先頭へもどる
PageTop