専門医インタビュー
歩き始めに股関節が痛む。それがずっと続いているなら、整形外科を受診してみてはいかがでしょうか。股関節が傷む原因は様々です。放っておいて良い症状なのか、それとも治療が必要なのか、はっきりわかれば前に進むことができます。東京新宿メディカルセンターの小松大悟先生に、股関節の疾病を解説していただきました。
寛骨臼形成不全
代表的な疾病は、「変形性股関節症」です。年齢を重ねるとともに少しずつ軟骨がすり減り、股関節が変形し痛みが生じるものです。日本人では特に女性に多いのですが、先天的に太ももの骨(大腿骨頭(だいたいこっとう))がはさまっている骨盤のくぼみ(寛骨臼(かんこつきゅう))が浅い、「寛骨臼形成不全」が主な原因です。大腿骨頭と寛骨臼が接触している面積が狭いので一部に負担がかかり、正常な方よりも軟骨がすり減りやすくなります。多くの方は50~60代に痛みを感じ始めることが多いのですが、詳しく聞いてみると、中高生や30代とかなり若いころから痛みを感じている方が多いようです。
また、最近増えてきているのが、「急速破壊型股関節症」です。ちょっとつまずいたり、転んだりといった軽い外傷をきっかけに、股関節が月単位で急激に悪くなっていくため、すぐに手術が必要になる注意すべき疾病です。
股関節の軽い痛みであれば様子を見てしまう方もいらっしゃると思いますが、日常生活に困るくらいまでに悪化して受診された場合は、治療の選択肢が限られることがあります。歩き出しに痛みが生じたり、スポーツをした翌日に股関節が痛んだり、1か月以上痛みが続くようであれば、一度受診をしてみてもいいのではないでしょうか。受診により痛みの原因が分かれば、今後どのようにご自身の身体が変化していくかが予測でき、日常生活での心構えや治療方法も分かります。
股関節が痛いと思っていても、実は、足首の動きが悪くなっていることや、膝など他の部位が痛みの原因ということが少なくありません。痛みが出ている股関節だけに着目するのではなく、腰や膝、足首の状態やバランスなどを確認し、痛みの原因が診断できるというのが整形外科を受診するメリットになると思います。
特に有効なのは減量と杖の使用です。減量によって股関節の負担が軽減できれば、軟骨のすり減りを抑制でき、進行を緩やかにすることが可能です。また、痛みをかばった歩き方だと筋肉が落ちやすく、正しく歩けていないことが多いのです。正しく杖を使い歩けると、痛みがある股関節の負担が軽減できるだけでなく、きちんと関節を使って歩く訓練にもなります。その他に、筋力トレーニングや可動域を広げるリハビリテーションを行うことで、股関節が安定し痛みが軽減する効果があります。もしも手術となった場合でも、筋力や体力は手術後の回復にも関わってきますので、普段から意識して維持していただきたいところです。
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