専門医インタビュー
手術中から2日間は硬膜外麻酔を使い、手術中には患部に痛みや炎症を抑制する複数の薬剤を混ぜたものを注射し、様々な点滴薬や飲み薬を併用します。そのため、手術後は強い痛みを感じにくく、リハビリがズムーズに開始できるようになっています。
手術前は、脚の筋力が落ち可動域も悪く、脚の長さが違っている場合が多くみられます。そのため、関節を曲げない、筋肉を使わない棒のような歩き方になっている方が多くおられます。手術によって痛みが軽減し、脚の長さがそろえば、筋肉をしっかり使う歩き方に改善していく必要があります。そのためには、リハビリが非常に重要です。手術の翌日から車椅子への移動などを始め、そこから筋力強化とあわせて、歩行器や杖を使って歩く訓練、階段昇降の練習など、日常生活に戻ってご自身で活動できるように、しっかりとリハビリを行います。手術前に関節可動域制限が強い患者さん、高齢で筋力低下が目立つ患者さんは少しリハビリに時間がかかりますので、手術前にあらかじめ入院期間の確認をしておいた方が良いと思います。
虫歯などの菌が血流を介して、人工関節に付着し感染症を引き起こすことがあり、また、糖尿病の方は、感染症のリスクが高まるとされています。そのため、手術後だけでなく手術前も、虫歯などがあれば放って置かずに治療し、血糖値をコントロールすることが感染症の予防につながります。手術方法や人工関節などの進歩により、近頃は、脱臼の発生率がかなり抑えられています。退院後の動作制限は少なくなりましたが、膝を開いて腰を落とすそんきょの姿勢を取らないようにしてください。また、人工関節に負担をかけないために、極端に体重を増やさないようにし、重い荷物を体の同じ側でばかり持たない、可能であれば階段よりもエスカレーターを使ったほうが良いと思います。運動に関しては、人と激しくぶつかるコンタクトスポーツは避けていただきたいです。ご自宅に戻ってしばらくすれば、テニスやゴルフ、卓球、登山などを行っている方がおられます。せっかく手術をしたのですから、普段からしっかり歩く、運動するということがリハビリにもつながります。ただ、どんなに調子が良くても人工関節の状態を確認させていただくために、定期的に受診することは忘れないようにしましょう。
1980年代、人工関節の手術が一般的ではなかった頃は、手術を行える医療機関に全国から患者さんが集まっていました。現在では多くの医療機関が導入している一般的な治療法の一つであり、施設によって成績が大きく変わらない、患者さんの満足度が高い手術となっています。股関節に痛みがあれば、まずはお近くの整形外科を受診されてみてはいかがでしょうか。手術や治療に対する不安は、何度でも医師に相談され、ご自身が納得できる治療を選択いただきたいと思います。
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