専門医インタビュー
福岡県
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若者からお年寄りまで、日常的に感じる膝の痛み。その原因は、年齢層によって異なります。若年層ならスポーツ障害やいわゆる成長痛など、若年特有の痛みがあります。それに対し中高年になると、変形性膝関節症による痛みがほとんどで、関節リウマチなどによる痛みも増えてきます。「歩くのがつらい」といった中高年の膝の痛みとその解消法について、膝関節の専門医である大牟田天領病院 副院長の久保田健治先生にお話を伺いました。
症状としては末期で、骨まで削られています。
別の角度から見ると、骨と骨が重なっているのがわかります。
膝の痛みの主原因となる変形性膝関節症は、軟骨や半月板といった、膝内部の膝窩部層を基盤とした部分の疾患です。おもな症状としては、膝の痛みと可動域制限で、膝が曲がりにくくなり、中でギシギシ音がしたり、ぐらつきが出たりします。さらに症状が進むと、水が溜まってくる場合もあります。変形性膝関節症が悪化すると、さらに可動域が狭くなると共に歩くのがつらくなり、やがては歩けなくなってしまうこともあります。年齢的には50代から増えてくる疾患です。なお、膝が内側に曲がってくるのを内反といいますが、日本人は内反型(O脚)で、膝の内側が悪くなる方が圧倒的多数です。それに対し、海外では膝の外側が悪くなる方が多い。外反型(X脚)の方が多いと聞いていますので、日本との違いはそのあたりに原因があるのではないでしょうか。日本人の内反は生活様式と遺伝的な性質(膝の形)に起因していると言われています。
初期の頃、まだ腫れもあまりなく、可動域制限もあまりないが、歩く時に痛みがある患者さんに対しては、保存的治療といいまして手術をせずに治療するのが一般的です。具体的には、まず生活様式を変えていきます。例えば、肥満のある方にはその改善をしてもらう、階段昇降やしゃがみこみ、立ち上がりなどの動作が多い方には、できるだけそれらの動作が少なくなるように指導します。また、大腿四頭筋の筋力増強の指導も合わせて行います。痛みが激しくなると、大腿四頭筋が弱くなりさらに痛みがひどくなるので、それを防ぎます。場合によって、内服薬あるいは外用剤での鎮痛効果を加えていくこともあります。それでもさらに痛みが続く患者さんに対しては、関節液の主成分であるヒアルロン酸を直接関節に注射する治療を行います。あるいはサポーターを着けたり、足底装具を足の裏に敷いたりすることで、歩く時の痛みを軽減する装具療法を施すこともあります。それでも中々治らない患者さんには、手術療法をお勧めします。
関節に負担がかかり骨と軟骨が損傷すると、滑膜が刺激されて関節液が過剰に分泌され、お皿の上部に水(関節液)が溜まります。
ありますね。膝に水が溜まると痛みがありますし、膝の曲りも悪くなります。その状態を放っておくと、大腿四頭筋の筋力が落ちるというデータもあります。膝関節の関節を包む膜の内側には、関節液を調節している滑膜という部分があるのですが、そこが炎症を起こすと、調節機能が壊れ水を外に出す働きが強まってしまい、膝に水が溜まります。「水を抜くとクセになる」と思っている方もいますが、私はよく「鼻水が出たら放っておきますか」と説明します。鼻をかんで、また鼻水が出てきても、それは鼻水の原因ではありません。鼻の中で炎症が起こっているから鼻水が出るのです。それと同様に、膝関節内で炎症が起こっているから水が溜まるのであって、抜いたからまた溜まるのではありません。
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