専門医インタビュー
特に、感染症には気を付けて下さい。膝の人工関節の場合は、感染症にかかると手術前より悪くなり、取り替える手術が必要になります。手術直後は、病院では抗生物質の予防投与などを行います。退院後は、手足などに小さな傷ができてもしっかり消毒をし、雑菌が入らないようにしてください。虫歯、歯周病、扁桃腺の炎症などは早期にしっかり治療しないと、細菌や毒素が血液に乗って人工関節を入れた場所に届き、遅発性の感染症を起こすことがあります。
膝は他の部位と比べて、体の表面に近いところに人工関節を設置するので、股関節などと比べて腫れやすい傾向があります。腫れや熱など、気になることがあればすぐ担当医へ相談してください。また、術後1年間は3カ月に1回、1年経ってからは半年に1回は定期健診が必要です。レントゲンでゆるみや摩耗がないか調べ、曲がりの具合をチェックします。退院後にリハビリを怠り膝の曲がりが悪くなる方もいるので、リハビリは気を抜かず、継続して行ってください。
ある程度の運動は推奨しています。むしろ、退院後はリハビリをしないと可動域が小さくなり、曲がりが悪くなります。日常動作以外のトレーニングや軽いスポーツは、筋力の維持にもつながり、可動域を保つためにも推奨しています。
術後にスポーツをする人は増えています。特に男性に多くいらっしゃいます。割合としては、術後から新たにスポーツを始める方よりも、術前から何らかのスポーツをしていて、「膝を治して再開したい」と手術に踏み切る方が中心です。ただ、跳びはねたり、繰り返し衝撃がかかったりする動作は、人工関節に負担がかかるので控えてください。過度のスポーツは、人工関節のゆるみ、脱臼、摩耗、骨折の原因になります。スポーツの適応については、患者さんの個々の状況にも左右されますので、実施前に必ず主治医に相談してから始めてください。
推奨されるスポーツ
許可されるスポーツ(ただし術前に経験があること)
推奨されないスポーツ
最近は、80歳代でも人工関節置換術をする患者さんが多くいらっしゃいます。昔は「歳のせい」と我慢していたものが、最近は健康年齢が上がり元気な高齢者が増えていますね。「残りの人生を痛いまま終えたくない」という患者さんもいらっしゃいました。膝が痛いとだんだんと動くのがおっくうになり、それとともに脚の筋力が衰えていきます。買い物が面倒、旅行もしない…生活の幅が狭くなり、閉じこもりがちになっていきます。人間の生活にとって、膝は非常に大切なものなのです。
しかし、自己判断は禁物です。痛みを我慢したり、健康食品や自分で調べたことだけで何とかしようとしたりしてはいけません。初期症状を参考に、思い当たればすぐ整形外科を受診してください。痛みがなくなればいいのではありません。スムーズに歩けることで、今後の人生の質を保つことができるのです。
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