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専門医インタビュー

これからの人生を、私らしく歩むために… 変形性膝関節症の治療

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福岡県

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日本整形外科学会専門医、日本整形外科学会スポーツ認定医。九州大学医学部整形外科から1982年に同病院へ。2006年に院長に就任。福岡ソフトバンクホークス、アビスパ福岡チームドクター

この記事の目次

手術にはどんなものがありますか。

保存療法を続けても改善されない場合は、患者さんやご家族と相談の上、手術療法を行います。半月板に異常がある場合は「関節鏡視下手術」、軟骨に異常があれば「骨切り術」もしくは「人工膝関節置換術」が適用となります。「骨切り術」、「人工膝関節置換術」のどちらを選ぶかは、患者さんの年齢や活動性、術後どこまで回復したいかを踏まえて検討します。

鏡視下手術での膝関節のモニタ写真
骨切り術後のX線

【関節鏡視下手術(内視鏡)】
軟骨に変性がなく、半月板に損傷がある場合に行います。転倒などで膝にケガをしたことがある人に可能性があり、動かすと瞬間的な痛みやひっかかりがあります。半月板や軟骨の破片を取り除くことで、これらが改善されます。

【骨切り術】
O脚は膝関節の内側の体重が掛かり、徐々に悪化していきます。この手術では骨の一部を切り、数日間器具を付けてO脚を矯正します。術後はややX脚になります。入院期間が長く、痛みが取れるのに数カ月かかりますが、膝がスムーズに曲がるようになり、動きに制限がありません。そのため、肉体労働やスポーツを希望される場合にも対応できます。50~60代程度の年齢が若い方に行うことが多いです。

骨切り術と人工膝関節置換術、どちらを選ぶか?

年齢,、活動性、 X線変化で決める

  • 骨切り術
    肉体労働ができる
    屈曲は術前とほぼ同じ
    除痛に数ヶ月かかる
    術後に X脚になる
  • 人工膝関節置換術
    除痛が完全で早い
    術後のリハビリが計画的で容易
    屈曲は低下する
    過度に使用すると緩みがおこりうる

人工膝関節置換術について、詳しく教えてください。

全置換手術(左)と
単顆置換手術(右)のX線

変性した関節を取り除き、人工関節で置き換える手術です。大きく分け、膝関節の表面を全て人工関節で置き換える「全置換術」と、一部(内側や外側)だけ置き換える「単顆(たんか)置換術」があります。単顆置換術は、傷が小さく輸血の必要がないのが特徴で、軟骨摩耗や骨の変形が激しい場合はできません。人工関節は、コバルト・クロム合金やチタン合金などでできており、軟骨の代わりにポリエチレンが使われています。近年のものは非常に耐久性が高くなっており、15~20年は持つといわれています。ほとんどの場合、手術の数日前から入院します。手術の翌日からリハビリが始まります。退院までのリハビリ期間は病院の方針によって異なりますが、早くて3週間程度、じっくり行う場合で5~6週間程度です。

MIS術後(5年)の膝。
切開が最小限なので、
傷が目立ちません

人工膝関節置換術には、除痛効果が大きくて早いという特徴があります。また、術後のリハビリが計画的で、骨切り術比べて容易です。一方で、膝の曲がりは骨切り術ほどよくはありませんが、ある程度のスポーツはできます。なお、近年増えている手術方法として、低侵襲性手術(MIS)という方法があります。これは、筋肉や皮膚を極力切らないで患者さんの負担をできるだけ軽減する手法であり、傷口は9~10㎝程度で済み、出血も術後の痛みも少ないのが特徴です。術後の回復が早く、リハビリもスムーズなため、患者さんの早期回復が可能になっています。

手術の際、または術後、注意されていることはありますか。

手術翌日のエコー検査

高齢の患者さんが多いので、術前には心電図とともに、循環器科の医師が診察します。胸部レントゲン、心電図、心エコー(心臓の弁の動きを見る)などを行います。また、人工関節には金属を使っているため、コバルト・クロム、チタンなどにアレルギー反応がないか、金属アレルギー検査もします。
術後は血栓ができやすいということもあり、静脈血栓塞栓症を防止するため、検査と処置を徹底します。手術の翌日には4割以上の人に小さな血栓ができるため、鼠径(そけい)部や膝裏など、エコーで血栓の有無や状態をくまなく調べます。その他、なるべく早くベッドから起こして関節運動をする、マッサージで血流を良くする、弾性ストッキングを着用してもらうなど、理学予防も施します。血流をよくする薬剤を投与するなど、薬物的予防を行うこともあります。このようなリスクや対応については、術前に患者さんとご家族に、納得するまで医師が説明をします。


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