専門医インタビュー
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弾性ストッキング
田野倉 膝・股関節に共通し、人工関節の手術の合併症として挙げられるのがエコノミークラス症候群(深部静脈血栓症)です。術中や術後に血流が悪くなることで、足の静脈に血栓(血の塊)ができることがあり、血栓が肺や他の臓器に流れて血管をふさいでしまうと、命に関わる深刻な状況になります。そのため、手術中には弾性ストッキングを着用し、術後にはフットポンプを使用するなど、しっかりと対策をとっていきます。
島田 細菌感染も、手術に伴う合併症として挙げられます。感染リスクは術後もゼロではなく、何でもない虫刺されやかすり傷から菌が入り、血液に乗って人工関節に流れるということがまれに起こります。特に膝は、薄い皮膚の下がすぐ骨ですので、術後に屋外や衛生的でない場所で膝をつくのはなるべく避けるようにします。過度に神経質になる必要はありませんが、できるだけ清潔を心がけて暮らしてほしいと思います。
水中ウォーキング
島田 膝も股関節も、人工関節にかかる負担を減らせるよう、できれば暮らし全体を和式から洋式に変えていき、椅子に座り、ベッドで寝起きするような生活スタイルにしていただけるとよいと思います。また、体重を増やしすぎないよう心がけ、筋力の維持向上のために適度に身体を動かすことを大切にしてください。関節への負荷をかけずに筋力を高められる運動として、水中ウォーキングは特にお勧めです。
田野倉 人工関節置換術は、「もっと山登りに行きたい」「またテニスをできるようになりたい」などアクティブな活動を期待して受ける方が多い手術です。スポーツは、格闘技やラグビーなど極端に激しいものは避けていただきたいのですが、軽いジョギングやハイキングなどは積極的に行ってよいと思います。テニスも、プロ選手のように全力でコートを走り回るような激しいやり方でなく、趣味程度に楽しむのであれば問題ありません。
田野倉 誰でも「痛みがある生活はいや」なものです。変形性関節症は年齢を重ねるごとに増える病気ですが、自分のやりたいことを行う老後を望みながらも、痛みのためにそれができないというのは不幸なことだと思います。手術だけでなく、関節の痛みの治療法はさまざま進化しています。変形性関節症と診断されても、初期であれば関節に負担をかけないような生活の工夫で痛みを改善できる可能性があります。我慢を重ねて暮らすのではなく、早期受診しご自身に合った治療法を見つけてほしいと思います。
島田 手術が怖いから、受診自体に踏み切れないという方も中にはいるかもしれません。しかし、意に沿わない治療法を病院で強要されることは決してなく、「変形が進んでいるから、必ず手術が必要」とはなりません。生活指導やリハビリから、再生医療、手術まで幅広い方法を提供している医療機関であれば、ご自身の希望に合った治療の進め方を相談できますし、最初から最後まで同じ主治医に診てもらうことも可能です。また、すでに一般の整形外科に通院しているものの経過がよくない場合は、膝・股関節の専門医を紹介してもらうことも検討してみてください。「他を紹介してほしい」と言い出しづらいのであれば、紹介状なしでも追加料金(選定療養費)がかからない大病院以外の施設を当たってもよいでしょう。ご自身が信頼できる医師のもとで、有効な治療法を見つけられるよう願っています。
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