専門医インタビュー
人工関節の手術は、医師から「いつ頃手術してください」と言うことはまずありません。2~3週間ほど家を空けられる時期はいつか、家族の大事な行事と重ならないか、といった日程を家族としっかり相談し、決めてほしいと思います。ご自身が手術を希望される場合、例えば「孫の結婚式に行きたい」、「趣味のテニスを続けたい」など、具体的な目標があると手術やリハビリを頑張る意欲がわいてくると思います。そのため、手術を受ける方には「〇カ月後にこれをやる、といった目標を持ってください」とよく伝えます。
弾性ストッキング
手術前の1カ月以内に術前検査で心機能、肺機能、内臓などをチェックし、疑わしい症状があれば内科の医師と連携しながら安全を優先して手術を行います。血糖値が高いと感染リスクが上がるため、手術日を延ばして糖尿病の治療を優先することもあります。術中・術後は下肢にできた血栓によって肺塞栓を起こすリスクがあるので、術前にDダイマー検査といって、血栓ができやすい状態かどうかを確かめる検査を行い、血栓ができやすそうであれば下肢エコー検査(超音波検査)で確認し、弾性ストッキングやフットポンプ、抗凝固薬を使って予防します。早期リハビリは、血栓予防にも役立つので、術後は早期から離床し、リハビリを開始します。また、股関節の手術後は、ごく稀に無理な姿勢を取ると脱臼の可能性があるので、禁止されている動作を行わないなどの学習と対策が必要になります。
人工関節の性能が上がったとはいえ、より長持ちさせるためには、転ばないことと筋トレ、定期検診を大事にしてください。半年に1回は受診して、レントゲンで不具合がないかをチェックしてもらいましょう。医師は、筋トレを継続してもらったり日常生活で困っていることについて聞いたり、励まし、背中を押すのも大切な役割だと思います。退院後の運動やスポーツ復帰は、主治医と相談の上、手術前から行っていた場合はテニスのダブルス、卓球、ゴルフは可能ですが、未経験のスポーツやバレーボールやサッカーのように人と接触するスポーツは避けたほうがよいでしょう。中には飛行機で旅行に行く方もいらっしゃいますが、その場合、空港のセキュリティゲートは国内ではほぼ問題ないですが、海外では止められる可能性があるので、旅行前に証明する方法を主治医と相談するといいですね。
「痛みがだんだん我慢できなくなってきた」と思ったら、専門医にかかって痛みの原因を適切に把握しましょう。早めに整形外科にかかるメリットは、正しい診断に基づいて治療法の選択肢が広がることです。手術しない治療法も含めて治療のプロセスを知り、納得して、自分で選び取ることができます。不安なことや気になること、治療したら〇〇をしたいという希望など色々あると思いますので、専門医にしっかり相談し、より良い解決策を探してほしいです。
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