専門医インタビュー
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太ももの内側と裏側を鍛える運動
手術以外の治療方法として、膝の痛みを抑えるために抗炎症薬の内服や、炎症をしっかり鎮めるためにステロイド薬を膝関節内に注射することがあります。ただし、ストロイド薬の注射を頻回に行うと、関節軟骨に悪影響を及ぼすおそれがあります。その他にヒアルロン酸の関節内への注射や運動療法、O脚変形などを矯正する足底板やサポーターなどの装具療法があります。
変形性膝関節症は、筋力の低下も関わっていると考えられるので、中でも筋力を増強させる運動療法は、膝痛があっても行ったほうがいいでしょう。運動する上で、特に、重要なのは膝関節を支える大腿四頭筋という筋肉を鍛えることです。具体的にどのように鍛えるかというと、太ももの前側の筋肉は、寝転んだまま足を上げ下げする運動、太ももの横側の筋肉は、横向きに寝転んで足を上げ下げする運動、太ももの内側と裏側は、両足の間に枕やボールを挟んで押し潰すという運動です。このような運動なら膝関節に負担をかけずに、必要な筋肉を鍛えることができるので、膝痛があってもできると思います。
また、体重が重い人は膝への負担を減らすための減量や、生活スタイルをイスやベッドを使う洋式に変え、正座もなるべく避けて膝関節に負担がかかるような動きを控えていくということも、膝痛の改善や変形性膝関節症の進行を遅らせることにつながると思います。
レントゲンなどの画像上いくら変形が進んでいても、歩くことなど日常生活に問題なければ手術を受ける必要はないと思います。ただし、変形が進み膝の痛みによって連続して100メートルも歩けないなど日常生活に不便を感じるようなら、手術を考えるタイミングだと思います。できれば筋力があるうちに手術を受けたほうが術後のリハビリが行いやすいことが多いものの、手術によって痛みが改善してから筋力をつけるということでもいいと思います。
人工膝関節の手術を受けられるかどうかは、全身状態が健康であるかどうかが大きなポイントになります。どうしても高齢になるほど元気がなくなってくるものですが、たとえ80代後半や90代の方でも、心臓病などの大きな病気がなく、お元気であれば手術は受けられることが多いと思います。
全置換術と片側置換術
人工膝関節の全置換術は、膝関節の表面全体を金属やポリエチレン製のものに置き換えるので、骨同士のぶつかり合いで起きている痛みはほぼ改善します。一方、片側置換術は、膝関節の片側だけを人工関節に置き換える方法なので、膝関節の内側だけ傷んでおり、靭帯や外側の半月板が健康な場合に適応します。全置換術に比べると温存できる組織が多いので、術後、比較的膝の曲がりがよく、生活する上で不便や違和感が少ないと実感する方が多い手術法です。ただし、もともと足の変形が進んでいる場合、人工関節の寿命が短くなるため向いていません。人生のうちで人工膝関節の手術は一回だけにしたいという人は、最初から全置換術を選んだほうが、メリットが高い場合もあると思います。
簡易ナビゲーションシステム
人工関節に均等に体重がかかるように正確に設置されているかどうかが、その後の耐久性や膝の曲がり具合などの機能性に関係するので大変重要です。また、正確に人工関節が設置されると軟骨の代わりとなるポリエチレンに均一に加重がかかりやすいので、どちらか片方だけがすり減りやすくなるといったことも少なくなると思います。そのために簡易ナビゲーションなどの手術サポートツールを使うことで、人工関節をより正確に設置することができるようになっています。
さらに近年では、軟骨の代わりになっているポリエチレンの材質が向上するなど、人工関節の性能が上がっています。性能が向上した人工関節が正確に設置されていれば、耐用年数は、全置換術の場合で30年は持つと思います。このように人工関節が正確な位置に設置できると様々な恩恵を受けることができると考えています。
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