専門医インタビュー
長野県
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PSTRエクササイズの例
私たちがPSTR(Pericapsular Soft Tissue and Realignment)エクササイズと呼んでいるもので、歪んで固くなった靭帯や関節包を、痛みを感じない程度にほぐしたり、広げたり、ゆるめたりすることで、股関節のスムーズな動きを取り戻すリハビリです。大阪市にある、ゆうき指圧院長、大谷内輝夫氏が開発された「ゆうきプログラム」の一部を医療機関向けにしたホームエクササイズで、当院と福岡和白病院で導入しており、現在その有効性を実証する臨床研究も進行中です。この体操は股関節痛を改善させるだけでなく、靭帯や関節包の拘縮により引き起こされた膝や腰を始めとする身体全体のひずみを調整し、バランスを整える効果もあると考えています。基本的に自宅で行うホームエクササイズですから、指導後はパンフレットや画像を参考に、患者さんご自身で継続して行っていただくことになります。他院で手術の適応と言われて当院を受診された患者さんでも、このエクササイズを実践して、拘縮や痛みなどの症状が改善し、手術が回避できている方が実際にいらっしゃいます。3カ月行ってもエクササイズの効果がない人や、関節破壊が進み日常生活に支障が出るほどの痛みがある人、腰部脊柱管狭窄や変形性膝関節症などを併発している人などには、やはり人工股関節置換術の方がよいといえるでしょう。
人工股関節置換術後のレントゲン
変形によって、骨盤側の寛骨臼と大腿骨側の骨頭のかみ合わせが悪くなった部分を、金属やセラミック、ポリエチレンなどでできた人工股関節に入れ換え、新しい股関節を作る手術です。変形のせいでずれていた部分や、短くなっていた脚を正常な形に近づけ、機能的にもきれいに歩けるようにします。両側悪い場合で、ご本人が希望される場合は、両側同時手術も可能です。麻酔、手術、入院が1回で済む、脚の長さをそろえやすいというメリットがありますが、手術時間が片側(1時間~1.5時間)の倍(2時間~3時間)かかり、麻酔薬の量も倍になるので、ある程度身体への負担が大きくなります。
また、出血も片側手術より増えますので、術前に自己血を800cc準備し、術中に出た血液も回収します。ただし両側悪い場合でも、片方の脚を手術することで負担が減り、もう片方の脚の痛みが軽減するケースもありますので、両側同時に手術するかどうかは、担当医とよく相談して決めるといいでしょう。
患者さんのCT画像のデータをベースにした3次元での術前計画を立て、人工股関節の設置位置や角度、大きさを事前にシミュレーションし、その計画通りに設置できているかをレントゲン透視装置で確認しながら手術を行います。人工股関節を正確な位置に設置できるかどうかは、術後の痛みやゆるみ、脱臼リスクに大きく影響するため、非常に重要です。当院では、前方からのアプローチですべての筋肉を温存するMIS(最小侵襲手術)を行っているため、脱臼リスクが低く、術後の回復が早いため、早期退院、早期社会復帰が可能になっています。また、傷口を閉じる前に痛み止めを注入するなど、手術直後の痛みを軽減するための疼痛コントロールも行っているので、多くの患者さんが、手術翌日から、荷重制限なしで歩行練習を開始しています。
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