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専門医インタビュー

痛みなく歩けるのは、人生の中で大切なこと。手術するしないにかかわらず、股関節専門医に相談を

この記事の専門医

伊志嶺 卓 先生

埼玉県

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主な診療分野:整形外科一般、股関節、下肢人工関節
略歴:2002年 獨協医科大学医学部卒業後、自治医科大学附属病院、2004年 自治医科大学附属さいたま医療センター、 2006年 友愛記念病院、2007年 JCHOうつのみや病院、2008年 経城病院、2009年 自治医科大学付属病院、2010年 JCHOうつのみや病院、2015年 自治医科大学付属病院、2018年より博仁会 共済病院
資格:日本整形外科学会専門医

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この記事の目次

人工股関節置換術後、どのような注意点がありますか?

後方アプローチ

後方アプローチ

人工股関節置換術には、手術の侵入方法に種類があります。大きくは、股関節の前方を切開して人工股関節を入れる「前方系アプローチ」と、後方(お尻のほう)を切開して人工股関節を入れる「後方アプローチ」があります。
近年、増えているのが前方系アプローチで、筋肉や靭帯を温存し、比較的小さな傷口で人工股関節への置換を行うので、術後の姿勢や動作にあまり制限がないことと、術後脱臼しにくいというメリットがあると、よくいわれています。それに対して後方アプローチは、筋肉を切り、広い術野を確保しながら人工股関節への置換を行います。オールマイティーな侵入方法ではあるものの、筋肉を切るという点で、後方アプローチは、前方系アプローチに比べて術後脱臼しやすいというデメリットがあるといわれています。しかし、実は、それは一概には言えないのです。後方アプローチでも切った筋肉や関節包をしっかりと解剖学的に修復すると、脱臼率は、前方系アプローチと変わらないというデータがあります。
私自身後方アプローチで行っており、切った後方組織(筋肉、関節包)は徹底的に解剖学的修復を行っております。また、人工股関節の脱臼のリスクを減らすために何よりも大切なことは、その人にとって適正なサイズの人工股関節を選び、それぞれ適切な角度と位置に入れることだと考えています。そもそもそれができていなければ、どんな侵入方法でも脱臼率は上がり、人工股関節の耐久性は落ちてしまいます。その上で、寛骨臼周囲の骨棘(こつきょく)をしっかり切除し、切った筋肉などを徹底的に解剖学的に修復することで、前方系アプローチと遜色ない低い脱臼率を得られると考えています。後方アプローチでも脱臼リスクが低減できれば、術後もほとんど制限なく生活できるようになります。ただ、私の場合は、股関節への負担をできるだけ避けるために、なるべく深くしゃがみ込んだりせず、イスやベッドの洋式の生活にすることを勧めています。

手術後はどのくらいで退院できますか?

当院の場合で、だいたい入院期間は2~3週間です。手術翌日から、車椅子に乗って軽く動き始め、術後2日目には痛み止めの硬膜外麻酔が抜去できるので、そこから本格的なリハビリが始まります。骨を削り、筋肉を切るので、術直後はどうしても痛むことがあるので、リハビリが遅れることがないよう鎮痛薬で痛みのコントロールを行っています。

股関節の痛みに悩んでいる方にメッセージをお願いします。

股関節の周囲だけでなく、腰や膝に痛みがある場合も、一度、股関節専門医を受診することをお勧めします。また、腰や膝が悪いといわれていたのに、よく調べてみたら、実は、股関節が悪かったということも多々あります。痛みの原因をしっかり特定するためにも、股関節専門医への受診は有効だと思います。また、鎮痛剤も効かず、歩くのも困難になってくると、人工股関節置換術が治療の選択肢に入ってきます。「手術はこわい、したくない」というのが大半の患者さんの本音だと思います。が、股関節疾患の保存療法というのは限られていて、それで一定の効果が得られなければ、手術という選択が良いと思います。痛みなく歩けるというのは、人間の生活の中でとても大切なことだと思います。強い痛みで完全に歩行ができなくなる、日常生活がしづらくなる前に、手術について考えてみることも大切ではないかと思います。糖尿病や心臓病などの持病を抱えている高齢の方でも、他科の専門医などと連携して、リスクを最小限に抑えながら人工股関節の手術ができる場合もあります。手術後の血栓対策は、弾性ストッキングの着用やフットポンプ、抗血栓薬の服用などで防ぐリスク対策もあります。高齢であっても諦めず、また、迷うことなく信頼されている股関節の先生に手術の相談をしてみていただきたいと思います。


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