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専門医インタビュー

早め、早めの受診で年齢を重ねても歩ける膝を維持しましょう

この記事の専門医

野崎 正浩 先生
  • 野崎 正浩 先生
  • 名古屋市立大学病院 整形外科 准教授
  • 052-851-5511

愛知県

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専門分野:スポーツ、膝(人工膝関節、膝関節鏡)

この記事の目次

骨切り術とは、どんな手術ですか?

治療の流れ

治療の流れ

骨切り術とは、膝関節の骨の一部を切って、荷重バランスを矯正する手術です。靴のインソールによる荷重の矯正を外科手術によって行うのが骨切り術であると理解していただいてよいと思います。
骨切り術が適応するのは、軟骨の摩耗が膝関節の内側もしくは外側に限局していること。さらに、年齢が若く、活動性が高い場合です。年齢は50~60代が中心になると思いますが、市民マラソンなどに出ているような活動性が高い方の場合は70代でも行うことがあります。
骨切り術のメリットは、骨癒合後には金属は抜去出来る為、体の中に人工物が何も残らない状態になり、どんなスポーツでもできるようになることです。ただし、デメリットもあります。入院期間は、内視鏡(関節鏡)手術に比べて長くなり、また、完全に体重をかけて歩けるようになるまでに、人工膝関節に比べて少し時間がかかります。

人工膝関節置換術について教えてください

部分置換術(左)と全置換術(右)人工膝関節の一例

部分置換術(左)と全置換術(右)人工膝関節の一例

人工膝関節置換術は、膝関節の傷んでいる部分を人工物に置換する手術で、部分置換術と全置換術の2通りの方法があります。人工膝関節置換術のメリットは、非常に回復が早いということです。たいていの場合、ほとんどの方が手術翌日から体重をかけて歩くことができ、手術後1週間もすると杖を使って歩けるようになり、2週間程度で退院できます。部分置換術だともう少し入院期間も短くなります。70代で手術を受ける方が多いですが、全身状態がよほど悪くなければ、ご本人が希望すれば年齢に関係なく受けられる手術です。もしも両膝ともに状態が悪い場合、ご本人が希望されれば、一度に両方の手術を行うこともあります。入院も1回で済みますし、経済的にも患者さんにとってメリットがあると思います。

全置換術、部分置換術とはどんな手術ですか?

人工膝関節全置換術後のレントゲン

人工膝関節全置換術後の
レントゲン

全置換術は前十字靭帯を切り、膝関節の表面全体を人工関節に置換する手術です。ただし、近年、前十字靭帯を残すタイプの全置換術も行われ始めています。これは前十字靭帯を取り除いてしまうよりも、手術後の患者さん自身の違和感は少ないようです。
部分置換術は、膝関節の内側もしくは外側だけ人工物に置換する手術です。レントゲン上は骨切り術の適応とほぼ同じような状態で、膝関節の片側に(内側もしくは外側)軟骨の摩耗が限局し、さらに、膝蓋大腿関節(PF関節)、前十字靭帯が傷んでいない場合に適応できます。部分置換術のメリットは、大腿骨と脛骨をつなぐ前十字靭帯を切らずに残せることだと思います。前十字靭帯が残っていると、膝が元々の動きに近い状態を維持でき、膝の安定性も良好なことが多い。自分の膝に近い感覚を持てることはメリットだと思います。

人工膝関節の耐用性や手術後の注意点を教えてください。

簡易なナビゲーションシステム

簡易なナビゲーションシステム

人工膝関節の寿命は、技術の進歩によって耐用年数が20年程度といわれています。
また理論的には、股関節の中心と足首の中心を結ぶラインが、膝の中心を通るようにすると、膝関節にまんべんなく荷重がかかり、長期耐用性につながります。そのため、簡易なナビゲーションシステムを使い、股関節、膝の中心、足関節が一直線になるよう精度を上げ、できるだけ長く人工膝関節が持つことを目指しています。人工関節の合併症として、発生頻度は少ないですが、人工関節の緩みや破損、軟骨代わりのポリエチレンの摩耗、インプラントへの細菌感染などによって再置換が必要になることがあります。特に、細菌感染には十分な注意が必要です。むし歯になっている歯をグッと噛みしめると細菌が血液中に入り込む可能性があり、そこから人工関節への感染が起こることがあります。そのため、手術後の患者さん自身の感染症対策はとても重要で、人工膝関節の手術を受ける患者さんには全員、周術期ケアといって、心機能や血管の状態とともに、歯科口腔外科を受診してもらい口腔内のチェックを行い、必要な方は治療を済ませてから手術を行うようにしています。


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