専門医インタビュー
岡山県
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人工膝関節の一例
部分置換術用の人工膝関節では、術後20年で90%以上の人が問題なく使っているというデータもあり、全置換術用の人工膝関節と同様に、30年後、40年後のデータも期待されています。また、近年は人工膝関節自体がさらに進化し、軟骨の役目を果たすポリエチレンが摩耗しにくくなったことなども、耐用年数の長期化につながっているといえるでしょう。
耐用年数が長期化したことで手術の適応年齢の幅も拡がっています。基本的には、50代で膝関節の片側だけが悪いケースには骨切り術をお勧めしているのですが、耐用年数の長期化が望める現在では、50代であっても軟骨の摩耗が激しい患者さんには、社会復帰が早く長期成績の良い人工膝関節部分置換術を適応してもいいのではないかと考えています。内側に手術した場合、将来的に手術していない外側に不具合が起きても全置換術で対応できますし、稀なケースではありますが、内側の部分置換術の部品を残したままで、外側にも部分置換術を行うという、より低侵襲な選択肢もあります。
術後3カ月までは、まだ十分に筋力が回復していない可能性があるので、転倒して骨折したりしないように気をつけてください。骨折した場所によっては、人工関節を入れ替えなければならない可能性も出てきますので、注意しましょう。ただし、多くの場合、3カ月を過ぎると痛みや腫れが治まり、筋力も回復して普通に日常生活を送ることができるようになりますので、その後は細かいことは気にせず、生活を楽しんでください。そのために人工膝関節置換術を受けたのですから。
基本的に生活動作に制限は設けていません。水泳や自転車こぎといった軽い運動は、筋力維持にも有効なので積極的に行うといいでしょう。ただし、マラソンやジョギングなど、継続して膝に負担がかかるスポーツは考え物です。行う場合は、医師にしっかりと相談してからにしましょう。
手術に不安があるのは当然です。私の患者さんにも、手術の話が出たとたんに「痛くなくなりました」とおっしゃる方が少なくありません。聞いてみると、行きたいところにもいかず、家の中に引きこもることで痛みを抑えているというのです。しかし、動かないことによって、循環器系の疾患を引き起こすことも十分に考えられますし、75歳時点での歩行能力が、その後10年間の健康寿命を左右するという報告もあります。健康な状態で長生きするためには、自分の脚で歩くということが非常に重要なのです。
退院した患者さんには、「こんなに良くなるんだったら、もっと早く手術すればよかった」とよくいわれます。「海外旅行に行ってきた」「趣味のスポーツに復帰できた」「O脚が治り、歩きぶりが良くなったと褒められる」といった喜びの声も多く寄せられています。健康長寿を望むのであれば、勇気をもって一歩踏み出してみるのも、ひとつの選択肢だと思います。信頼のおける膝の専門医に、よく相談してみるといいでしょう。
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