メニュー

専門医インタビュー

飛躍的に進歩した変形性膝関節症の治療法 専門医に相談を

この記事の専門医

前野 晋一 先生

愛媛県

プロフィールを見る

平成9年慶應義塾大学医学部卒業。同年慶應義塾大学医学部 整形外科学教室入局、平成15年東京電力病院 整形外科 副部長、平成17年国際医療福祉大学附属三田病院 講師、平成21年オーストラリア・North Sydney Orthopaedic and Sports Medicine Centreへ臨床留学。平成23年国際医療福祉大学塩谷病院 准教授、平成25年南松山病院 整形外科部長を経て現職。

この記事の目次

手術を受けるタイミングはいつですか?

変形性膝関節症のレントゲン

変形性膝関節症のレントゲン

人工膝関節置換術を適用する一つの目安は、痛みのために活動量が落ちてきたタイミングです。例えば、ある時から急に動けなくなった、無意識のうちに人に買い物を頼むようになった、近くへ行くのにも車に乗るようになったなどという場合です。人工膝関節にして膝の痛みが取れたとしても、なかなか筋力が戻りにくく、術後のリハビリにかなり時間がかかることがあり、期待していた動きを取り戻しにくいこともあります。手術を受けた患者さんからも、「もっと早く手術を受けておけばよかった」という声を聞くことがあります。手術はもちろん最終手段で、もう駄目だと感じた段階で行うべきではありますが、特に高齢の方ほど、筋力がまだあるうちに早い段階で行うべきであることもあり、タイミングは大切かと思います。

2 種類の人工膝関節置換術とは?

人工膝関節全置換術後のレントゲン

人工膝関節全置換術後のレントゲン

人工膝関節部分置換術後のレントゲン

人工膝関節部分置換術後のレントゲン

人工膝関節置換術には、関節表面を全部入れ替える全置換術と内外側や前方など悪い部分だけを入れ替える部分置換術の2種類があります。当院では最近は部分置換術が増えていて、この手術が従来の骨切り術のような位置づけになる可能性があると考えております。
部分置換術は、変形は一部のみでじん帯もしっかりしており、可動域もよいという患者さんに行っています。将来、置換していない部位の軟骨がすり減ってくることもありますが、その場合は全置換術で対応可能です。部分置換術は全置換術に比べ、傷口の範囲が小さく手術時間も短い、出血や侵襲も少ない、そして、感染症や血栓など合併症のリスクも少なく、離床は早いし入院期間も短いなどメリットがたくさんあります。このほか、部分置換術では前・後十字じん帯などが温存されるので、より自然な動きを感じやすく、膝の曲りも良いのが特徴です。
手術時間は、どちらも1時間~1時間半、入院期間は部分置換術で1~2週間、全置換術で2~3週間ほどになります。部分置換術の場合は侵襲が少ないので退院時にもかなり違和感がとれている方もおられますが、全置換術では数カ月から1年近く痛みや腫れが残ることもあります。ただし1年後など長期をみれば両者にあまり違いはありません。
部分置換術でもO脚は少し治ることが多いですが、全置換術はO脚を完全にまっすぐにできます。また長期成績も全置換術が優れ、全置換術だと10年で9割、15年で8割、部分置換術では10年で8割、15年で7割ほどは長持ちするといわれております。
頻度は少ないですがいずれの手術も手術にともなう合併症があります。手術後の痛みやばい菌が付着して起きる感染や血栓、インプラントの緩みなどです。きちんとご理解いただき正しく合併症予防に努め対処する必要があります。

最近の人工膝関節置換術ついて詳しく教えてください。

人工膝関節の基本的なコンセプトは1970年代くらいから大きく変わっていませんが、手術周囲の環境は大きく変わりました。術者の経験、道具やインプラントの素材、薬剤の進歩などが大きいと思います。20年ほど前の手術では、大量の輸血が必要なほど出血が多く、リハビリも遅く、血栓が詰まるなどの合併症が多い、傷が大きく残るなど、手術を行う側も受ける側も非常に抵抗がありました。それが、今ではかなり気軽に受けられる手術になっております。
手術では、膝の軟骨を削ってインプラントに置き換えますが、それだけではO脚は治りません。それをまっすぐにする手段としてナビゲーションといわれるコンピュータがあります。
手術中は脚全体の形が見えにくい状況になるため、ナビゲーションが膝や足関節、股関節の位置を感知し、骨を切る位置や角度などを正確に教えてくれます。そのため、より正確に手術をすることができ、痛みがとれるだけでなく、まっすぐな膝を取り戻せるようになっています。
また、薬剤の進歩などにより、痛みもかなりコントロール出来るようになりました。こうした進歩の結果、両膝が悪い方の場合でも、一度に両膝ともに手術することが十分可能になっております。両膝同時手術でも、入院期間は3~4週間程度です。


この記事の医師がいる
病院の詳細はこちら

ページの先頭へもどる

PageTop