専門医インタビュー
リハビリテーション室
傷の腫れや出血に伴う痛みもあるでしょうが、手術の翌日から動いて、リハビリに取り組みます。
筋肉の侵襲度合いが痛みにも直結するので、より筋肉を切らないで手術することが、肝心なのです。傷ついた部位が少ないほど、手術後の痛み
は少ないはずです。手術中に、周りの組織に痛み止めの注射をしますし、痛みに応じて痛み止めの薬を出すこともあります。
痛みが軽い方が、より早くリハビリにはげむことができますから。
術後のリハビリの目標は、自分の脚に体重をかけて立てるように、歩けるようになることです。関節を柔らかくしてあげるためにも、筋力トレーニンが大事です。
手術前は傷んでいるところをかばっているので、左右の脚の筋力に差がついたり、脚の長さが違う状態で歩いていたりします。
人工股関節にして脚の長さを整えると、手術前と比べ歩き方のバランスが変わるので、そのバランスをとる歩き方や筋力強化のリハビリを行います。
入院は2~3週間。傷の治り具合と歩行が落ち着き、日常生活をするにあたって問題のない動きができるようになれば、いつ退院してもかまいません。
特に、やっていけないことはありません。人工股関節を自分の体に馴染ませる意味でも、出来ることはなんでもして、動いて下さい。ただし、転倒、ケガには注意して。自宅に戻ってからの生活は病院とは環境が違うので、新たなケガをしないように。そのためにも、筋力トレーニングを継続しなくてはいけません。
脱臼の心配もないわけではないのですが、私が行う前方から入っていく方法は、あぐらをかいて関節を大きくひねるようなことをしなければ、外れることはないと思います。これ以上ひねると外れてしまうという姿勢は、あらかじめ注意することもありますが、基本的には普通の生活の中では、まず外れることはありません。制限なく動いてください。
股関節周囲の筋力が戻ってくれば、人工股関節自体は多少激しい動きをしても壊れるものではないのです。股関節を安定させて、長持ちさせる意味でも、自分の生活をよりよくさせる意味でも、筋力の維持、バランスの維持が一番。そのことを意識して、筋力トレーニングを続けて下さい。
人工股関節は性能がアップして、30年も耐久性がある結果は出ていますが、定期的なメンテナンスは必要です。
退院後2週間から1カ月の間に受診。その後も、1年に1回、半年に1回は、定期的に通ってチェックを受けましょう。
ほとんどの人は、手術後2カ月もすれば筋力が戻ってきます。関節も安定し慣れてくるので、ほぼ問題なく生活できるようになります。さらに1年もたてば、人工股関節にしたことを忘れてしまうくらい、自由に活動しています。
水泳やウオーキングを楽しんでいる人が多いようですが、高齢の人でも、山登りや海外旅行に行ってきたという報告はよく聞きます。
多くの人が言うのが、「なぜ、今まで我慢していたのだろう。もっと早く手術をすればよかった」ということです。大決心をして片方の股関節を手術した人は、「すぐにでも、もう片方もお願いします」と言ってきます。
手術を受けたいと自分自身が強く望んでいない人には、無理に人工股関節置換術を勧めることはしません。迷っているまま手術をした人ほど、術後のリハビリをしっかり続けて行わなくなるからです。不安なことや疑問があれば、何でも聞いて下さい。そのうえで、理解し、納得してから手術を受けましょう。
ただ言えるのは、痛みを我慢して我慢して、手術しないで粘っていても、状態が良くなるわけではないということです。
まずは、太ももとおしりの筋肉が落ちないようにトレーニングとストレッチを続けて下さい。そのうえで、これから、自分がどんな人生を送りたいのか、何をしたいのか、正直なところをすべて伝えてくれれば、それに合わせた治療法、対応策をアドバイスします。
手術だけがすべてではないし、手術したからもう大丈夫、ということではありません。その後も、人工股関節と上手に付き合っていけるように、医師とは一生のお付き合いになるでしょう。
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