専門医インタビュー
人工股関節の一例
手術を決めたら、患者さんは特に風邪をひかないように体調管理に気を付けて下さい。
また、転ばないようにとも話しています。手術後、スムーズにリハビリに入ることができるためにも、筋力トレーニングとストレッチを十分に行っておくこと。また、事前に骨密度を測定し、必要なら服薬治療を行ったうえで、細心の注意を払いながら手術をしていきます。特に女性は、年齢とともに骨粗しょう症になる人も多いので、手術後にも治療を続けます。骨が丈夫であることはもちろん大事ですが、骨粗しょう症だから、人工股関節置換術ができないということではありません。
患者さん一人ひとり、骨の形状が違いますから、私たちはあらかじめ手術の手順をシミュレーションします。レントゲンやCTで確認しながら、その人に適した人工股関節を選び、それをどの位置に入れるか、どこから切って、どの角度で挿入していくかなど、術前計画を十分に練っておきます。
手術の前に、手術の手順はほぼ決まってしまうのです。本番ではそれに沿って手術をしていきます。さらに、思い描いた通りに、正しい位置に人工股関節が挿入できたか、手術中にレントゲンで確認、調整しながら手術を進めていきます。理想的な位置に設置できたか、外れやすくないか、手術中にしっかり確認しています。
人工股関節置換術のやり方には、後方から、真横から、前方から切って人工関節を入れるという、3つのパターンがあります。私は、筋肉や組織をなるべく傷付けたくないので、前方から入る方法で行っています。全身麻酔で手術にかかる時間は1~1時間半くらいで手術が行えます。
この方法だと、筋肉自体を傷めないですむのと、患者さんは仰向けに寝ている状態なので、左右の足の長さを均等に合わせやすいからです。
股関節が悪い人の脚は、軟骨がなくなり、骨同士がぶつかり合うので骨が削れて、その分短くなります。左右の脚の長さがそろわないと、せっかく人工股関節にしたのに歩き方のバランスが悪くなります。だから、関節の痛みを取り去るだけでなく、左右の脚の長さ合わせるということにも気を付けています。人工股関節を設置する位置によって、脚の長さを調整するのです。
人工股関節置換術は、今、低侵襲の手術が主流になっています。小さい傷で手術するよう心掛けていますが、傷口のサイズよりも、痛みを取ってあげること、より機能的に動く関節を作ってあげることの方が大事。筋肉や軟部組織をできるだけ傷付けないで、正しい位置に設置することに気を配っています。
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