専門医インタビュー
様々な装具類
変形性膝関節症と診断された場合は、まず、保存療法としてヒアルロン酸やステロイド剤などによる痛み止めの注射や飲み薬、貼り薬による薬物療法を中心に行います。主に、炎症を抑えて、痛みの改善を目指すのです。
それと同時に、装具療法といって、膝の変形を装具によってサポートし、膝の一部分にかかる負荷を軽減して、痛みの改善や進行予防を目指す保存療法も行うことがあります。
装具は、膝の変形によって膝が外側に開くO脚の強い人の場合に、靴の中敷きとして入れて足の外側を少し持ち上げるタイプのものや、太ももからふくらはぎにかけて足の外側にバーを入れたサポーターを装着するタイプのものなどがあります。
それに加えて、膝を支える筋肉も重要ですから、患者さんには筋力トレーニングも勧めて、症状の改善や進行予防を行います。
保存療法ではどうしても痛みが改善しないという場合は、次の選択肢として手術があります。
変形性膝関節症の初期の場合は、関節内部や半月板を掃除する膝関節鏡手術などで痛みが改善することがあります。ありとあらゆる治療法を試したけれどもどうにもならない場合に、人工膝関節置換術という方法があるととらえてもらうと良いと思います。
3次元3Dによる術前計画
チーム医療の手術室スタッフ
人工膝関節置換術というのは、膝関節の傷んだ骨を削って金属を埋め込み、その間に軟骨の代わりになるポリエチレンを挟み込むという手術法です。手術をする目的は、患者さんの生活の質が向上することにありますから、より安全に確実に手術できるよう、手術前から様々な対策を立てて実施しています。
たとえば、できる限り健康な膝の状態を再現するために、手術前に3次元コンピュータグラフィックスによって高精度なシミュレーションを行っている医療機関も増えています。
手術は、トライベクターアプローチという筋や腱へのダメージを最小限にとどめる手術進入法を用いています。このアプローチ方法導入後は、以前、別の方法で行っていたときよりも術後の回復が早いように感じています。ただし、第一前提は、人工膝関節を正確に設置することですから、ある程度、皮膚や筋肉を切開することもあります。その場合も、関節包、筋膜の裏表と関節の各層を個別に縫合しており、そのほうが、回復が早いように感じています。
変形性膝関節症の患者さんは、大抵の場合、両足が悪くなっています。人工膝関節置換術は、患者さんの希望や全身状態によって両足同時に行うこともあります。片足ずつの場合は、1ヶ月間くらい間を空けて行います。
人工膝関節置換術後のレントゲン
かなり以前は、人工関節の耐用年数は10~15年くらいでした。今は、技術革新が進んで、耐用年数は20年、30年くらいは期待できると言えるまでになっています。
特に、人間の膝軟骨の代わりになるポリエチレンの技術が進歩して、ある程度のスポーツならできるまでになっています。そうした人工関節自体の技術進歩と手術を行う先生の手技などが相まって、人工膝関節の耐用年数や患者さんの満足度も上がってきていると思います。
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