人工膝関節は痛みを取り除く最終手段

保存療法を続けても痛みが強くて困ったら…

薬を飲んで、湿布して、筋肉が衰えないようにリハビリを続けても、加齢に伴 う衰えなのですから膝の症状は完全に治らないこともあります。
レントゲンを見ると関節の変形が進んでいても、それほど痛くない方もたくさんいます。レントゲンと症状は必ずしも一致しません。 見た目だけで判断して手術になることはないのです。Ｏ脚がひどくても、痛みはそれほどないからこのままでいいという方もいます。 反対に軽い関節の変化でも痛みが強く出る方もいます。まずは、保存療法を続けてみましょう。
手術以外の治療を徹底して行ったうえで、それでも痛みが強くなるばかりで辛い場合の最終手段が、人工膝関節置換術をはじめとする手術療法だと考えています。 つまり、変形性膝関節症の方が初めから手術・人工膝関節が必要になるというわけではありません。 人工膝関節置換術の目的は、痛みを取って快適に生活してもらうことです。
大事なことは、痛みの原因をきちんと調べることです。 もしかしたら軟骨のすり減りが原因ではなく、靭帯のゆるみや膝周囲の筋肉の炎症が原因かもしれませんし、時には腰や股関節に原因があることもあります。 自己判断せずに専門医を受診し、痛みの原因が何かを知ることが大事です。そのうえで適切な対処法を知りましょう。

傷んだ関節を取り換える

人工膝関節により脚の
全体的なバランスが整う

膝の関節の中の太もも側とすね側の傷んだ骨を削って金属を埋め込み、その間に軟骨の代わりになるポリエチレンを挟み込むのが人工膝関節置換術です。
手術では、ただ単に傷んだ関節を人工のものに取り換えるだけでなく、さらに脚の全体的なバランスを整えることも大切です。
荷重が脚全体にまっすぐ伝わるのが理想的な脚のバランスなのですが、そのために人工膝関節置換術では骨を切る角度を綿密に計算して、股関節―膝―足首が一直線上に並ぶようにします。
言い換えると、O 脚やX 脚を手術でまっすぐにするということです。
脚の全体的なバランスを適正にすることは、見た目が変わるだけでなく、人工膝関節を長持ちさせるのにも役立ちます。

靭帯機能の有無がポイント

人工膝関節置換術後のレントゲン

人工膝関節置換術をしても膝を支えるのは基本的には患者さん自身の靭帯です。 靭帯の機能がしっかりしていれば、自分の関節も、人工膝関節もずれないですみます。 関節リウマチの患者さんの中には、靭帯も溶けてしまっている方もいますから、そういう場合には、上下の骨に通常より長い金属を入れるなど、特殊な構造をした人工膝関節を用いる場合もあります。
非常に強いＯ脚、あるいはⅩ脚になってしまうと靭帯が引き伸ばされるので、靭帯の機能が破たんしやすくなります。 でも、変形性膝関節症はたいていそこまではなりません。骨も欠損していなくて靭帯が残っている方がほとんどだと思います。
実は、靭帯がすっかりなくなってしまってからではなく、まだ残っている、筋力も失われていない状態で、人工膝関節置換術を受けることを勧めます。