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専門医インタビュー

健康寿命を延ばして、明るく健康な生活を ~痛みなく歩くための人工股関節置換術~

この記事の専門医

前田 雅人 先生
  • 前田 雅人 先生
  • 高山赤十字病院 整形外科部長兼リハビリテーション科部長
  • 0577-32-1111

岐阜県

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日本整形外科学会専門医、中部日本整形外科学会評議員、日本体育協会公認スポーツドクター

この記事の目次

人工股関節置換術について教えてください。

人工股関節置換術後のレンドゲン写真

人工股関節置換術とは、変形した股関節(骨盤側と大腿骨側の両方)を金属やセラミックなどの人工素材の関節に置き換える手術です。日本では年間5万件近く実施され、現在も増えつつあります。その背景には、手術によって症状が改善しやすく患者さんの満足度が高いこと、現在では耐用年数が向上して15~20年の使用が期待できるようになったこと、保険適用で患者さんの費用負担も少ないことなどがあげられます。特に、人工関節の耐久性が延びたおかげで、かつては60歳過ぎまで手術をせず痛みを我慢していただいた場合もありましたが、いまは若い方にも安心して手術を勧められるようになりました。
ただし、どんな手術でもあるように、人工股関節置換術にもリスクが伴います。人工股関節置換術の場合、合併症のリスクは一般的に7~8%といわれます。感染症や脱臼といった人工関節術特有の合併症もあるので、術前に十分な説明を聞き、しっかり理解した上で手術に臨んでいただきたいと思います。また、手術後も合併症に対する注意は必要で、定期的に経過を診ていくことが必要です。人工関節が傷んだり緩んだりしていても自分では気がつかないこともありますので、最低でも1年に1回は診察を受けてください。なお、遠方の施設で手術を受けたが、定期健診に通うのが億劫になり、そのまま放置した結果、大事に至ってしまった患者さんもいらっしゃいます。術後の定期検診やアフターケア、もしもの時の対応などのこと考えると、自宅から通院するのが苦にならない場所にある施設での治療をお勧めします。


術後の患者さんの様子、また印象的な症例がありましたら教えてください。

歩行訓練の様子

手術後の患者さんは、リハビリの歩行練習が始まったとき、これまで苦しんできた関節の痛みが取れていることに気がつかれます。もちろん手術による創部の痛みや腫れはありますが、ほとんどの方がこの時点で手術の効果を実感されます。また、退院後は、多くの方が痛みのない生活を送ることができるようになります。歩き方がきれいになったと言われたり、家族や友人と旅行に行けるようになったことを喜ばれたりする方もたくさんいらっしゃいます。
以前、痛みがひどくて2年ほどほとんど歩いていなかったという83歳の患者さんを手術しました。リハビリは少し長くかかりましたが、退院時には杖をついて歩いて帰られました。その後、通院してくるたびに歩行能力が上がっていることには目を見張るものがありました。術後7、8年経った今でも家族に伴われて歩いて来院されます。ロコモティブシンドロームという言葉がありますが、痛い箇所があって動けない体では、どうしても運動器の機能低下につながり、「健康寿命」は短くなってしまいます。特に高齢社会では、これが要介護などのリスクにもつながってきますので、一人ひとりが日頃から自身の運動器の状態を認識していくことが大切でしょう。

ロコモティブシンドロームについては、こちらをご参照下さい。


最近、病院のホームページやポスターなどで、MIS(エムアイエス)手術という言葉を目にします。

MISとは最小浸襲手術のことで、体に負担の少ない手術方法のことを指します。小さな傷で、筋肉などの組織のダメージをより少なく手術することで、術後の疼痛を軽減し、早期のリハビリや社会復帰を可能にします。女性の場合、傷が小さく目立たないことを喜ばれる方もいらっしゃいます。
MISは患者さんにとって非常にメリットの大きい手術ですが、手術には高度な技術を要します。この手術を受けても人工関節が正しく設置されていなければ、長持ちさせることができなくなり、早い時期の再置換が必要になる場合もあります。現在、MISは多くの施設で行われるようになってきましたが、MISにもこのようなリスクが伴うため、実績のある病院を選んでいただくことが重要です。


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