専門医インタビュー
東京都
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手術を受けるにあたっては、医師から「インフォームドコンセント」と呼ばれる術前説明があります。説明内容は、手術の目的、期待できる効果、手術方法、術後の注意点、感染症や手術のリスクなどについてです。人工股関節置換術は、侵襲の大きな手術です。最小侵襲を目指して進めていますが、それでも他の手術に比べれば比較的侵襲は大きくなります。そして、引き起こされるリスクを最小限にするためにどういう対策をしているか、正しい情報を患者さんに提供します。
手術のリスクとしては、まずは出血があげられます。また、人工物を体内に入れるので、感染の問題もあります。その他にも、脱臼や人工関節の不具合・破損・ゆるみ、場合によっては神経損傷もありえます。あと血栓症、いわゆるエコノミークラス症候群にも注意が必要です。
多くの患者さんは、手術が終わるまでは緊張しています。しかし手術が終わると、翌日からリハビリなどの次のステップがどんどん待っているので、それをこなしているうちにアッという間に時間が過ぎてしまうでしょう。
以前、人工関節の寿命は10年~15年と言われていましたが、その後の技術やインプラントの進歩により、今の寿命は約20~30年と言われています。耐用年数が20~30年であれば、平均寿命80歳として、50歳で手術しても再置換術を受ける必要は少なくなります。その結果、50代で手術を希望される患者さんが増えています。もちろん、90歳、100歳まで生きる時代ですので、40代だけではなく50代の患者さんも再置換する可能性はあります。ただし再置換を行った場合でも、摩耗を避けられない摺動面部分の取り換えだけで済めば、手術後は約1~3週間程度で退院することができます。
コンピュータナビゲーションシステムは股関節の形状や位置関係を案内してくれるシステムですが、このシステムを使うことで、かなり複雑な股関節の構造を3D化して見ることができます。車で使用されているカーナビのように股関節の形状や位置関係を画面に表示するため、正確な骨切りや靭帯バランスを実現し、計画通りの安全な手術を可能にします。
手術部位の侵襲をできるだけ小さくし、患者さんの負担を軽くしようという手術手法をMIS(最小侵襲人工関節置換術)といいますが、股関節の場合、10cm未満の皮膚切開で筋肉や腱をできる限り温存します。MISでは切開部分が小さいため、必然的に見える範囲が限られるのですが、このような見えにくい部分についてコンピュータナビゲーションを活用すれば、より理想的な形で人工関節を入れることができます。コンピュータナビゲーションシステムはあくまでも支援システムですが、このテクノロジーを使うことで、人為的なエラーを削減し、より正確で安全な手術を行うことができ、長期成績にもつなげていくことができるのではないかと思っています。
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