専門医インタビュー
神奈川県
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身長の半分+2~3cmが
杖の長さの目安です
術後の合併症で注意が必要なものに「深部静脈血栓症(エコノミー 症候群)」があります。筋力を落とさないためにも血栓症の予防の面でも、同じ姿勢で横になっている時間が短い方がいいので、術後は手術翌日から起き上がって脚を動かす運動を開始します。リハビリは、患者さん自身が意欲をもって取り組むことが重要です。しかし、あまり無理をすると傷口が腫れてしまいます。腫れが酷ければリハビリは思うように進みませんので、患部のアイシングや弾性ストッキングを装着するなど、十分に気を配りながら行っています。術後5日~1週間後から歩行訓練を開始し、杖をついて自力で歩けて階段の昇降ができるようになったら退院です。2週間~3週間で退院していく人がほとんどですが、自身の生活環境に応じてリハビリ病院に転院して訓練を継続する人もいます。リハビリ病院では、炊事や入浴、和室での生活訓練など、それぞれのライフスタイルに応じたリハビリを行います。転んだら骨折してしまう可能性もあるため、退院後しばらくは杖の使用をお願いしています。杖は自分自身の支えとなるだけでなく、周囲の人に「注意してください」と知らせるサインにもなります。
筋力が上がれば、自然に杖を持ち歩くのを忘れてしまうでしょう。なお、人工関節が自分のものとして馴染んでくるには3カ月~半年くらいかかります。その間、夏は人工関節の部分が熱をもっていたり逆に冬は冷たく感じたりと違和感があるかもしれませんが、あまり気にしなくても大丈夫です。半年経過し状態が落ち着いてくれば、通常の生活動作であれば何をしても大丈夫です。
膝が90度も曲がらないと感じたら、
すぐに受診してください
手術直後には、膝の曲げ伸ばしが硬いと感じることがあります。人工膝関節が目指している可動域は110度~120度ですが、銭湯などに置いてある低めのイスに座るときの角度をイメージするといいでしょう。膝が90度も曲がらない・サイズが合わない・硬くなったなどと感じた時には、すぐに受診してください。また術後1年以上経ってから、膝がガクガクする・膝に水が溜まってきたなどの症状が出て、人工関節に緩みが生じてくることもあります。緩みも早めに発見できれば、ポリエチレン製のプレート部分だけを入れ替えることで対処可能ですが、完全に緩んでしまった後では人工関節を全部取り換えなくてはなりません。このようなリスクを極力回避するためにも、退院後の定期検診は絶対に忘れないようにお願いします。3ヵ月~1年に1回は来院いただき、レントゲンや触診、血液検査などで人工関節に異常がないかを確認します。定期健診は文字通り一生続けると思ってください。
湿布を貼る・痛め止めを飲む・マッサージを受けるという程度の対処では効果がなく、ヒアルロン酸注射を繰り返していたり何度も膝の水を抜いたりしている人は、ぜひ前向きに人工膝関節置換術を検討してみてください。ヒアルロン酸注射の目安は多くても5回程度で、それ以上は続けてもあまり意味はないでしょう。人工関節に対する漠然とした不安感や歩けなくなるという誤解を恐れるあまり、残りの人生をこのまま動作制限が多い状態で送っていてもいいのかどうか、もう一度よく考えてみましょう。実際に手術を受けた患者さんの多くが、「もっと早く人工関節にしておけばよかった!」とおっしゃっています。長い間膝の水抜きを続けていたけれど思い切って手術をした結果、海外旅行にも行けるようになったと喜んでいる患者さんも沢山います。膝の痛みで困っているのであれば、原因の把握とそれに応じた処置が必要です。痛みをあきらめないで、まずは整形外科の専門医を受診してください。専門医であれば、膝の状態を正しく調べた上で患者さんに最も適した方法を検討し、安全で納得のいく手術を提供することが可能です。人工関節そのものもそれを取り扱う手術の技術も日々進歩していますので、安心して任せていただければと思います。
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