専門医インタビュー
大阪府
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手術のアプローチ方法。MISでは約8cm~10cmの傷口で済みます
皮膚の切開(侵襲)をなるべく小さくし、患者さんの体にかかる負担を少しでも軽くする手術手法を、 最小侵襲手術(MIS)といいます。従来の人工股関節置換術では約20cmの皮膚切開を行っていましたが、MISでは約8cm~10cmの傷口で済むのが特徴です。また、傷口が小さいだけではなく、中の筋肉をできる限り傷つけない手術法なので、痛みが少なく術後の回復が早い特徴があります。術後のリハビリを早期からスタートできるため、早期退院・早期社会復帰が可能になります。現在、全国で一番多く行われている股関節へのアプローチは後側方アプローチですが、この方法は股関節後方の筋肉を切るため、どうしても脱臼リスクを伴います。当院では前方もしくは前側方からアプローチを行い、筋肉と筋肉をより分けて股関節に進入し患部を切除することで、より身体への侵襲が少なく、脱臼リスクも低減することが可能になっています。手術時間は、片脚あたり1時間半~2時間です。
はい、可能です。ただし受けるにあたっては、いくつか条件があります。具体的には、75歳未満で内科的な合併症が少ない人で、自己血の貯血が可能な人が対象になります。片側だけ手術の場合、輸血が必要ないこともありますが、両側はある程度の出血が予想されますので、400~800cc程度の自己血を事前に貯血します。また、両側に痛みの程度差がある場合は、痛みが強い側の手術によって反対側の痛みが軽減するケースも少なくありませんので、両側の痛みと変形が同程度であることも両側同時手術の条件となります。両側同時手術のメリットとしては、手術や麻酔、入院が1回で済むこと以外に、入院に伴うコストが抑えられること、術中に脚の長さを確認しながら手術できるので脚長差を揃えやすいこと、などがあります。手術時間はどうしても片側の倍必要になりますが、入院期間は片側の1.2倍くらいで退院できます。入院期間があまり取れない人でも対応できる、というのも大きな特徴だといえるでしょう。なお、当院では前方からのアプローチのため、患者さんは仰向け(仰臥位)で手術を行います。仰臥位ですと、両側同時手術でも体位の変換が必要ありませんし、術中に不測の事態が起こった場合でも迅速に対応することができます。前方アプローチによって、両側同時手術の時間短縮と安全性が図られているといってもいいでしょう。
両側同時手術の適応と主なメリット
【適応】
【メリット】
人工股関節の一例
セメントを使う方法(間接固定法)と使わない方法(直接固定法)があります。当院では、65歳未満の比較的若い方で合併症のない人には、「骨が強いのでしっかりとした初期固定が得られる」という判断のもと、セメントを使わない方法をとっています。65歳以上の患者さんには臼蓋(寛骨臼)側にはセメントを使わず、大腿骨側にはセメントを使うというハイブリッド固定法を主に行っています。なお当院では、院内に骨銀行(ボーンバンク)を開設しており、臼蓋(寛骨臼)の変形の程度がかなり強い患者さんや再置換術が必要になった患者さんには、骨移植を併用しています。この場合は、臼蓋(寛骨臼)側も大腿骨側もセメントを使用する人工股関節置換術で対応しています。骨銀行では、手術の際に使用可能な骨が残っていた場合、患者さんの同意のもとマイナス80度で冷凍保存しています。移植の際は事前に滅菌機にかけるなど、感染などが起こらないよう細心の注意を払って使用しています。
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