メニュー

専門医インタビュー

変形性股関節症の治療法 ~人工股関節置換術の成功のカギは、術前から行う筋力訓練~

この記事の専門医

千葉県

プロフィールを見る

千葉大学大学院修了後に君津中央病院を経て、2014年4月から東千葉メディカルセンターに整形外科特任助教として赴任、現在に至る。
【専門分野】関節外科、骨折治療 【資格】医学博士、日本整形外科学会専門医 【所属学会】日本整形外科学会、日本股関節学会、日本人工関節学会、日本骨折治療学会

この記事の目次

術後の患者さんの様子はいかがでしょうか?

リハビリテーション室と股関節の曲げ伸ばし訓練の様子

股関節の強い痛みが治まる、深い動きができるようになる、両脚の長さが揃って普通に歩くことができるなど、これまで患者さんが日常生活の中で不満に思っていたことの多くが解消されるため、人工股関節置換術は非常に満足度の高い手術だと思います。ただし、痛みのために歩けないなどの移動制限があった人は痛みが取れると動きも劇的に良くなりますが、手術前に車イスの状態だった人や筋肉の拘縮が激しい状態の人は、十分な筋力が付いて回復するまでに少し時間がかかります。手術はあくまでも関節の治療であり、筋肉そのものを治療するものではありません。人工股関節置換術は、筋肉の委縮が激しくなる前に丁度いいタイミングを見計らって行うことも必要です。人工股関節置換術の成果を発揮するためには、患者さんがリハビリを持続して行っていけるかどうかが重要なポイントです。術前から手術直後、さらに退院後も継続してきちんとリハビリを行うことができる人が、手術を受ける条件の一つになっています。実は、手術の前から患者さんのリハビリ指導は始まります。患者さんの状態によって多少異なりますが、具体的には手術を受けることが決まった日から、股関節周りの筋肉を鍛えるための運動や体操などを指導していきます。術後、より柔らかい関節を作るためにも、リハビリは手術前から行うことが非常に重要です。入院中は専門のスタッフがついて動き方の訓練やリハビリ指導を行います。

術後の脱臼を避けるために、気を付けるべき姿勢を教えてください。

脱臼しやすい姿勢の例

手術直後は、まだ股関節が馴染んでいないため、ある一定の角度以上曲げると脱臼することがあります。この脱臼しやすい姿勢は手術のアプローチによって異なるのですが、どのアプローチであっても、無理に脚をひねった姿勢・伸展して外旋するような姿勢・膝を強く抱え込むような姿勢などは避けてください。患者さんには、「女座り(腰をひねって横に足を投げ出す和式の座り方)はしないほうがいい」と話しています。洋式の生活をしている分には問題はないでしょう。3カ月もすれば、日常生活の普通の動きは何でもできるようになります。半年くらい経てば、人工関節にしたのを忘れるくらい馴染んでしまう人がほとんどです。

術後の定期検診はきちんと受けましょう

この頃になると、筋力を衰えさせないための運動、例えば自転車漕ぎやプールでの水中ウォーキングなどを勧めています。家事に関する動作については、特に制限はありません。つま先立ちができ跛行しないでも歩けるようになれば、車の運転をしても大丈夫です。無茶をしない限りどんな動きをしても問題ないのですが、「転ばないように」ということだけは注意してください。術後の大切なことの一つに、定期健診をきちんと受けることがあります。調子が良くても知らないうちに人工関節が緩んでいたり、何か変化が起こっていたりすることもあります。術後は、年に1回は定期的なチェックが必要です。

股関節の痛みに悩んでいる方へ、メッセージをお願いします。

股関節の痛みで悩んでいる人は、まずはその原因を把握することが重要です。ご自身の痛みが臼蓋形成不全という構造上の問題によるものなのか、あるいは他の要因で起こっているのかなど、正しく診断してもらいましょう。痛みが出始める場所は、人によって様々です。太ももの人もいるし、坐骨神経に似た痛みの場合もあります。いろいろな治療をしても腰や背中や脚の痛みが改善しない場合は、股関節の専門医に相談してください。たまに「人工関節にすると脚が動かなくなる」と思い込んでいる人がいますが、それは全くの誤解です。経験のある医師が行う人工股関節置換術は、股関節の痛みを取り除いて滑らかな動きを取り戻し、バランスの悪い歩き方を修正するのにはとても良い治療法です。日ごろから強い痛みで苦しんでいて日常生活もままならない人にとっては、十分に検討する価値のある治療だといえるでしょう。しかし、より正常に近い関節の動きを取り戻すためには、手術を受けても「それで終わり」という訳にはいきません。股関節を動かしているのは、その周囲を囲んでいる様々な筋肉や腱です。人工関節にする/しないに関わらず、この筋肉をしっかり付けておくことがまずは重要といえるでしょう。


この記事の医師がいる
病院の詳細はこちら

ページの先頭へもどる

PageTop