専門医インタビュー
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腱板断裂
拘縮肩と間違われやすいのが「腱板断裂」です。腱板とは肩甲骨と上腕骨をつなぐ腱のことで、腱板断裂はこの腱が上腕骨から剥がれた状態です。拘縮肩と同じように肩の痛みがあり、夜間痛も出やすいのですが、肩の動かしづらさには違いがあります。他の人に動かしてもらっても腕があがらなければ拘縮肩、他の人の手助けであがれば腱板断裂というのがひとつの目安です。
腱板断裂には、転倒などによる外傷性断裂と、加齢によって腱板がゴムのように伸び、次第に切れてしまう変性断裂があります。外傷性断裂は50~60代の活動性が高い男性に多く、変性断裂は性別に関係なく60~70代によく見られます。四十肩・五十肩と自己判断している方の中にはかなりの割合で腱板断裂が含まれていると考えられます。
一度切れた腱板は元には戻らないので、外傷性断裂は早めに手術が必要です。仕事やスポーツで肩を使う頻度が高い方は、断裂が拡大する可能性が高いため多くの場合で手術が適用されます。一方、変性断裂の場合は断裂の状態や痛みが軽度であれば、薬物療法で痛みを和らげながらリハビリを続けます。3カ月ほど経過観察を行っても、痛みや可動域が改善しなければ手術を検討します。
ただし腱板が断裂していても、必ずしも手術というわけではありません。腱板は4つの筋肉から成り立っていて、他の筋肉である程度代償することができます。とくに高齢の方は肩を大きく動かす頻度が少なく、状態によっては生活に支障がないケースもあります。
内視鏡を使って切れた腱板を腕の骨に縫い付ける「鏡視下腱板修復術(きょうしかけんばんしゅうふくじゅつ)」が主流です。断裂が拡大して腱板の修復が難しい場合には、太ももから筋肉を移植する手術や、2014年から65歳以上の方に対して認可されたリバース型人工肩関節置換術(りばーすがたじんこうかたかんせつちかんじゅつ)など、治療の選択肢が増えていますので、専門医に相談した上で治療方法を決めてほしいと思います。
鏡視下腱板修復術
リバース型人工肩関節置換術
肩の痛みが2~3カ月続くのは、「年のせい」だけではないかもしれません。近所の整形外科に受診してレントゲン検査で肩の状態を診てもらい、そこから2~3カ月治療を続けても改善が見られないのであれば、エコー検査やMRI検査を受けられる医療機関へ相談されることをおすすめします。
四十肩・五十肩は自然治癒することも多いですが、なかには痛みや腕があがらないことで生活に支障が出てしまうケースもあります。また、腱板断裂やそのほかの疾患であれば手術などの治療が選択肢になることもあります。エコー検査やMRI検査であれば肩関節の周りにある腱板などの組織の状態を確かめることが可能です。まずは現状を把握することから始めてみましょう。
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