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専門医インタビュー

~痛みなく運動することができる脚・腰は健康の基本~除痛だけでなく社会復帰を目的にした人工膝関節置換術

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宮崎県

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日本整形外科学会認定整形外科専門医

この記事の目次

術後のリハビリに向けて、その目的や心構えについて教えてください。

リハビリ室の風景と階段昇降

術後のリハビリで、患者さんをどのように指導し実際に取組んでいくかについては、手術の成功を左右する大きな要因の一つです。では、いつから・どれくらいリハビリを行うかですが、当院では翌日から歩行訓練を始め、その後は日常動作訓練や階段昇降など、3~6週間ほど理学療法士が積極的にリハビリに参加します。翌日からスタートすることについては、術後の様々な合併症を防ぐ意味でも、非常に重要だと考えています。リハビリ開始後、順調にプログラムを進めることができる人はどんどん進め、筋力訓練も可動域訓練も無理のない範囲で行っていきます。また、ただ自分の脚を治すのではなく、リハビリの重要性を手術の前から説明して、「いよいよ、リハビリだ」という意欲を患者さんに持っていただいています。術後、看護師や理学療法士などが、「転ばないように」、「こういう姿勢をとらないように」と説明はしますが、本人のやる気がない限り、やってはいけないことを適切に守れるわけがありません。また、適切な筋力や可動域を保つためにもリハビリは継続して行う必要があるのですが、本人に意欲がないとこれも難しいでしょう。一方、転んで骨折したり人工関節が壊れたりする人は、術者の責任だと考えています。医師は、膝のどのような動きにも問題が起きないよう、また患者さんが転んでも大丈夫なように、安定した膝・膝関節を作る必要があります。リハビリの段階で、患者さんが膝・膝関節に不安を感じないよう、できる限りのことをするのが医師の役目と思います。

術後の生活で気をつけることや心がけるべきことは何ですか?

退院後に届いた患者さんからの手紙

術後、日常生活で何かしてはいけないことがありますかと聞かれたら、「特にありません」と答えています。むしろ一大決心をして手術をされたのですから、基本的には制限を余り設けず、できるだけ普通に生活する方が良いでしょう。筋力がどのくらいあるかで程度は変わってきますが、置き換えた人工関節に問題などなければ、一般的な生活は当然送ることができます。患者さんの中には、手術したことで、膝をいかに使おうかと強く意識される人もいます。ただし、無理な動作は決して行わないようお願いします。胡坐をかいたり正座ができたりする人も中にはいらっしゃいますが、無理に曲げるのは人工関節の破損の原因になります。スポーツは、水泳や自転車、グランドゴルフなど、膝関節への衝撃が軽いものであれば大丈夫です。競技に関して言えば、サッカーやバスケットボールのようなコンタクトスポーツや、ジョギングなどのジャンプをする運動は行ってはいけませんが、ジャンプしないミニバレー、柔道の形などは問題ありません。

最後に、膝関節の痛みに悩んでいる方へメッセージをお願いします。

膝関節や股関節などの運動器は、内臓器などと比べるとその重要性が感じにくい方は多くいらっしゃるのではないでしょうか。しかし、血管障害や糖尿病、高血圧、などの病気を引き起こす大きな要因は、やはり脚・腰に起因するものが多く、一方で運動器は、人間が自分の意志で動かすことができる、唯一の臓器です。このように考えると、病気を治療する上で重要なのは、「脚・腰を自ら鍛えて運動すること」だといえるのではないでしょうか。例えば、糖尿病で膝が悪い人に対して「運動しなさい」というのは厳しいことですが、中には糖尿病を良くするために手術をする人もいますし、手術はしたくないが糖尿病の進行を食い止めるために運動をして、健康になられる方もいます。健康の基本である、「運動ができるような脚・腰を作る」ということが、丈夫な体を作るという点でいかに大切なのかということをもう一度考えていただき、より健康な日常生活を送っていただきたいと思います。


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