専門医インタビュー
手術を受けるタイミングは、膝の痛みのために自分のやりたいことが出来なくなったり日常生活に支障が出たりする時だと思います。膝の変形による痛みが強い場合は手術も治療法の一つと考えますが、無理に手術を受ける必要はありません。患者さんによっては、手術を受けることに不安を感じていたり手術の具体的な内容が分からなかったりすることが多くあると思います。しかし、そのような状況のまましっかり理解できずに手術を受けてしまうと、「こんなはずじゃなかった」と後悔をしてしまうかもしれません。不安なことや分からないことがあれば、まずは外来で担当の先生からきちんと説明を受け、自分の膝の状態や具体的な治療内容を十分理解した上で、最終的には自分が納得できる治療法を選択されることをお勧めします。
代表的な手術は3つあり、患者さんの症状や変形の程度や生活背景などに応じて選択されます。初期の段階であれば、関節鏡を使用して傷んだ半月板や遊離体を取り除く関節鏡視下手術を行うことがあります。活動性の高い比較的若い患者さんで膝の内側のみが変形している場合であれば、脛骨(すねの骨)を切り膝の内側にかかる負担を減少させる高位脛骨骨切り術という方法もあります。これらの方法では改善が期待できない変形や病態がある場合は、変性・磨耗した関節表面をインプラントに置き換える人工膝関節置換術が選択されます。
関節鏡視下手術
骨切り術
人工膝関節単顆置換術(左)と全置換術(右)
まず手術を進めるために、一般的な検査としてレントゲンやMRI、CTなど必要な検査を行い、その画像をもとに手術方法について計画を立てます。実際には使用するインプラントの厚みを考慮しながら関節表面の骨を切り、バランスを調整しながら人工関節を設置します。
関節の内側もしくは外側だけに変形が限局していれば、その部分だけを人工関節に置き換える単顆置換術を行うことがあります。また、関節全体に変形が進んでいる場合は、膝関節の表面全体を人工関節に置き換える全置換術が適応となります。単顆置換術は関節の部分的な置換であるため全置換術に比べて侵襲が少なく早期回復が望めます。
以前は、手術後の痛みを抑える薬や方法があまりありませんでした。しかし、術後の痛みは患者さんの苦痛になるだけではなく、術後のリハビリを遅らせる原因にもなります。近年は薬や痛みをコントロールする方法が増えています。手術を行う前にブロック注射を行い、また術中に関節内から直接痛みや炎症を抑える薬を注射することもあります。術後も痛み止め(点滴、内服など)を併用して少しでも痛みを取り除くようにします。このように以前に比べて手術後の痛みは大幅に軽減されており早期離床にもつながっています。
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