専門医インタビュー
石川県
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断裂の部位や種類にもよりますが、受傷後早期に固定とアイシング(冷却)をおこないます。そして、MRI撮影をおこない、診断確定後に関節水腫(すいしゅ)が起きていれば水を抜き、疼痛や炎症があれば膝関節内にステロイド注射を打ちます。近年、膝関節内だけでなく膝関節周囲の滑液包にも疼痛や炎症が出ることが分かってきており、ここにステロイド注射を打つ治療法もあります。滑液包は靱帯と筋肉の間など全13箇所にありますが、超音波検査により問題のある箇所を高い精度で確認できるようになっています。
その他には、リハビリテーションで可動域訓練、筋力訓練、動作訓練などをおこない、膝関節の機能の回復をはかることも重要です。
大きな断裂や横方向の断裂をはじめ、断裂の部位や種類が予後の良し悪しに関わることから、すぐに手術をおこなったほうがよいケースがあります。また、MRI撮影では捉えられない半月板断裂が約10%あるといわれているため、画像所見が認められなくても痛みや引っ掛かりが続くときは手術が必要です。一方、中高年・高年齢層における半月板変性断裂では症状がないということも多く、このようなときは無理に手術をおこないません。ちなみに、半月板変性断裂の有病率は、50代で約25%、60代で約35%、70代で約45%とされています。
関節鏡視下手術
半月板の断裂部を縫いあわせる縫合術と、断裂部を周囲とともに切りとる切除術があり、内視鏡の所見にもとづきながら、半月板のクッションとしての役割を損なわないよう、治癒が期待できる部位には縫合術を、傷みが進行している部位には切除術を適用します。
縫合術も切除術も10年前にくらべて進歩しており、その理由としてデバイスの改良・開発によるところが大きいと感じています。特筆すべきは縫合器で、広く開口しなくてよいうえに、膝関節内で縫いあわせを完了でき、患者さんの負担を軽減できるようになりました。
また、手術中に患者さんの下肢を保持するための器具が登場したことで人力に頼らなくてもよくなり、助手の医師の労力が減ったほか、執刀医も落ち着いて手術が進められるようになりました。さらには、関節鏡の映像が精細になったことで膝関節内をすみずみまで診ることができ、より細部まで確認をしながら手術がおこなえるようになりました。
断裂の部位や種類にもよりますが、荷重開始の時期や可動域訓練の時期は、担当の医師や理学療法士に確認し指示に従うようにしましょう。日常生活については、半月板はねじりに弱いので、このような動作をともなう段差からの着地などには普段から注意するべきです。スポーツ復帰については、一般的に縫合術では約3ヶ月後にジョギング、約5ヶ月後にスポーツ活動が、切除術では約1ヶ月後にジョギング、約3ヶ月後にスポーツ活動が可能で、縫合部の接着を待たなければならない分、縫合術のほうが回復までの期間は長くなっています。また、日常生活においてもスポーツ復帰においても、手術後長期間、膝を深く曲げることを禁止しなければいけない場合があるので、こういった点も担当の医師や理学療法士にあらかじめ確認するようにしましょう。
膝関節の痛みの原因は多岐にわたります。まずは原因が膝関節内にあるのか膝関節外にあるのかを見極めなければいけないので、どのようなとき、どのあたりに痛みを感じるかを、医師にできるだけ正確に伝えましょう。また、夜間痛や安静時痛があるなら、症状がかなり進行している可能性が高いので、早期に整形外科を受診してください。膝関節の痛みの治療は日々進歩しており、選択肢もさまざまなものが出てきています。医師とじっくりと相談をして、ご自分のライフスタイルにあった治療をはじめいただければと思います。
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