専門医インタビュー
ヒールのない紐靴を選ぶのが理想といえます。例えば、先のとがったおしゃれなヒールで坂道を下るというような状況では、どうしても母趾と示趾に負担がかかってしまいます。紐靴は、このように歩いた時に足が靴の中で移動し前に滑るのを紐で予防することができます。靴の専門店で、外反母趾に精通したシューフィッターに相談しても良いと思います。とはいうものの、「デザインの良いものを履きたいから」とそういう靴を選ばない人が少なくありません。そのような人は、日常的には外反母趾対策の靴をしっかり履いていただき、おしゃれをしたい場所のみでヒールを履くというように調整しながら、できるだけ足のケアを心がけるようにすると良いでしょう。
足の筋力トレーニングや装具療法、足底挿板(そくていそうばん・靴の中敷き)の使用が一般的です。足の筋力トレーニングではタオルギャザー運動といってタオルを足の下に引き、それを足の指で引っ張って引き寄せる運動や、ビー玉把持訓練といってビー玉を足の指でつかむ訓練などが有効です。これらは、手術をした場合の術後のリハビリでも行われています。
装具療法は、患者さんの変形や症状に応じてさまざまな種類があります。母趾と示趾の間にシリコンでできた装具を着用するタイプは、変形を矯正することで痛みや腫れを抑えることが期待できます。またメタタルザルバーという装具は、靴の底に装着することで足底に負担がかからないようになり、胼胝の痛みを軽減する効果が期待できます。足底挿板は足のバランス(外側縦アーチと内側縦アーチ)が矯正できる中敷きを靴に入れるというものです。健康保険を適用し患者さんの足の形に合わせてオーダーメイドで作製できます。
これらの治療は症状を和らげる効果は期待できるものの、外反母趾を完全に矯正し正常に戻すことは期待できません。そのため、治療を続けながら定期的に検診を受け、足の変形が進行していないか確認することが大切です。
装具や足底挿板の一例
タオルギャザー運動
外反母趾角と中足骨間角
画像的には「レントゲン画像で外反母趾角が20度以上、中足骨間角が15度以上ある」、臨床的には「バニオン(母趾の付け根の骨が内側に突出している部分)や足裏の胼胝(タコ、魚の目)による疼痛がある」といったことが基準となります。母趾以外も注意が必要で、示趾や中指(中趾・ちゅうし)に痛みがあったり変形が生じていたりすると手術が選択されることがあります。
「変形や疼痛によってどれくらい生活に支障をきたしているか」によって手術が検討されるわけですが、外見上かなり変形が進んでいても手術を希望されない人もいれば、逆に変形が僅かでも疼痛が我慢できず、手術を選択される患者さんもいらっしゃいます。医師とよく相談の上、治療を進めるようにしましょう。
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