専門医インタビュー
大きく進歩したのがプレートやスクリューなどのインプラントの性能です。10 年ほど前に第1 中足骨専用のインプラントが開発され、骨同士を固定する力が高まりました。その結果、早期のリハビリ開始が可能になり、手術後の外反母趾の再発率が低下しています。また、手術後の疼痛管理も進歩していて、手術の麻酔時に神経ブロック注射を併用することで手術後の痛みをかなり軽減できるようになりました。
手術で気を付ける点は、わずかな確率ですが創部感染と矯正部分の骨が癒合しないこと、長期的に見ると外反母趾の再発や関節の動きに硬さが残ることがあります。このような合併症についてはインプラントの選択や手術中の対策、術前・術後のリハビリなどを徹底し、リスクをできるだけ下げる取り組みを行っています。再発については手術後~1年の間に傾向が出やすいので、手術後の定期的な受診も大切です。
リハビリのプログラムは、外反母趾の手術方法と使用するインプラントによって異なります。一般的には数週間のギプス固定を行い、ギプスが外れた後からサンダルのような装具を使って歩行訓練を開始します。ギプスの固定期間は、第1中足骨の骨切り術の場合は術後3週間ほど、インプラントの固定力がより強い関節固定術(Lapidus法)では1週間程度です。手術翌日からギプスが外れるまでの間は、指を動かすリハビリや松葉杖を使って歩くトレーニングを行います。
入院期間は若い方だと2泊3日程度、70~80代は3週間程度と年齢によって異なりますが、松葉杖を使って歩ける状態が退院の目安になります。骨が癒合するには通常2カ月ほどかかりますので、退院後しばらくは必要最低限の歩行とリハビリに留めてください。足のむくみが落ち着いて靴が履ける状態になるには約3カ月、立ち仕事や歩き仕事ができるまでには約4カ月かかり、運動ができるのは約6カ月後と考えておくといいでしょう。このような回復にかかる期間も考慮して、手術の時期を医師と相談してほしいと思います。
外反母趾は、痛みがなければそれほど治療を急ぐ必要はありません。ただし今痛みがなくても、加齢にくわえてパンプスなどの幅の狭い靴を履き続けることにより徐々に進行することがあります。とくに足裏の指の付け根にタコができていたら、足の横アーチがゆるんでいる開帳足のサインです。足の親指の傾きや開帳足といった外反母趾の特徴的な症状が気になる方は、早めに整形外科を受診しておくといいでしょう。医師のアドバイスを受けることで、その先の治療選択肢が広がると思います。
外反母趾の治療は保存療法にしても手術療法にしても、100%の方が満足できる方法はありません。治療中に不具合や不安があれば、その都度、医師に相談してみましょう。お互いを理解することで良い治療の選択ができ、より良い治療結果につながるものと思います。お仕事や生活の状況も伝えて、ぜひ納得のいく治療法を選んでください。
ページの先頭へもどる
PageTop