専門医インタビュー
岡山県
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保存療法を行うことで、多くの方が特に問題なく生活できるようになります。膝関節は一度損傷すると元には戻りませんが、運動療法などを心がけ注意して生活していくことで手術を受けずに過ごしていけると思います。
一方で保存療法を続けても、効果が期待しにくい方や効果が見られない方もおられます。何ヶ月も何年も前からとても困っていて、さまざまな保存療法を続けてきたけれど十分な効果がなく、症状があまり良くならないという方には手術を勧めることがあります。
膝の手術には色々な方法がありますが、手術時間もそれほど長くなく、輸血が必要なほどの出血量になることも少ないため、高齢の方や持病がある方でも手術を受けることができると思います。ただ、ご本人の痛みの感じ方に反して、レントゲンやMRIで膝関節の変形があまり見られない場合は、外科的治療では改善が見込めないケースもあり、そのような場合は手術を勧めないこともあります。
骨切り術
関節鏡視下手術
変形性膝関節症の代表的な手術には、関節鏡視下手術、骨(こつ)切り術、人工膝関節全置換術、人工膝関節部分(単顆)置換術と大きく分けると4つあり、患者さんの年齢、症状やライフスタイルを考えて手術方法を選択します。
関節鏡視下手術は、半月板が切れている状態の時に削ったり縫い合わせたりする手術です。関節軟骨の損傷がそれほどなく、半月板の損傷が強い場合は、この手術により症状の改善がかなり期待できます。傷口も小さく比較的身体への負担が少ないので術後の復帰も早いのが特徴です。関節軟骨の損傷が強い方の場合長期的に見ると痛みが再発することが多いのですが、一定期間は痛みが軽減するので、侵襲の大きい手術に抵抗のある若い方や時間が取れない方などには向いていると思います。
膝の変形が進んでいても若い方の場合であれば、人工関節の耐用性が気になると思います。そのような場合には、骨切り術を行うことがあります。骨切り術は、すねの骨を切って脚の形をO脚からややX脚にして体重のかかるバランスを変えるので痛みの緩和が期待できます。近年インプラントの進歩によって術後安静期間が短くなったことからよく行われるようになり、比較的高齢の方にも行われるようになりました。しかし、主に変形している部分が内側に限局されている方にしか適応できず、骨を切る手術なので骨が癒合するまで少し時間がかかり、高齢になると骨癒合に関連したリスクが高くなります。
人工膝関節全置換術(左)と
部分置換術(右)
人工膝関節には膝関節を全て換えるタイプと内側、外側ないし膝蓋大腿関節のみを換えるタイプがあります。このうち、全てを人工関節に置き換える人工膝関節全置換術は、重度のO脚やX脚の方、靭帯損傷がある方など、どのような変形の方にもほぼ対応できます。術後の膝の曲がり具合に制限が生じることもありますが、靭帯が機能していない場合でも人工関節がその機能も兼ねてくれるので膝の機能を維持することが期待できます。一方で、外側もしくは内側の軟骨に問題がない場合は、悪くなっている部分だけを人工関節に換える人工膝関節部分(単顆)置換術が行われることがあります。この場合、換えない部分の軟骨や半月板がほぼ保たれていることと、靭帯の機能が良好であることが手術の前提条件になります。その他、大腿骨と膝蓋骨の間の関節だけが悪い場合に行われる部分置換術も行われることがあります。
人工膝関節置換術は1970年くらいから行われている歴史ある手術です。特にここ10年~20年では、術後の痛みを抑える知識と技術が進歩してきたと感じます。
以前は、人工関節の術後はすごく痛いと言われて敬遠されていた時期もありました。しかし、疼痛緩和のための硬膜外ブロックや神経ブロックの導入に加え、数年前から全国的に導入されているカクテル注射という、関節内に麻酔薬など複数の薬を混ぜたものを注射する方法によって術後の痛みがかなり改善されています。現在は、痛みを軽減させる色々な工夫が行われており、術後はそれほど苦痛なく過ごせるようになっているだけでなく、リハビリも手術直後からスムーズに開始できるようになっています。
耐久年数については、術後20年たっても90%~95%の方は入れ替え手術を行わず過ごせているという報告もあります。人工関節は何年たったら入れ換えましょうというものではなく、問題なく使えていれば入れ替えの必要はなく、40年間使用している方もおられます。
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