専門医インタビュー
院内勉強会
人工関節の手術は、より正確な位置に人工関節を設置し、可動域の改善や長期耐用性が獲得できるよう様々な研究が行われ、手術方法や人工関節、使用する機器の改良や進歩が続いています。しかし、正確に人工膝関節の手術が行われても、状態が改善したのかどうか、ご自身ではよく分からず、術後の満足度につながりにくいことがあります。ところが、周りの方から、以前よりもしっかり歩けるようになったねと褒めてもらえると、きちんと歩けているようになったのだと認識できるだけでなく、もっとリハビリを頑張って、もっとしっかり歩けるようになろうという気持ちにもつながると思います。現在では、1時間程度で手術が終えられるなど、手術そのものの機能的価値(ファンクショナルバリュー)が高まり、患者さんの満足度が向上しています。しかし更に満足度を向上させるためには、科学的なデータでは表しにくい感情的価値(エモーショナルバリュー)を高めていくことも大切だと思います。そのため、手術によって痛みが軽くなれば、何をしたいのか、誰に会いに行きたいのか、誰にご自身の膝や股関節を見てもらいたいのかといったことが大変重要になると思います。人とのつながりがあれば、もっと膝が曲げられるようになろう、もっと歩けるようになろうと頑張ることができ、機能的価値にも大きな影響を与え、より高い満足度が得られると思います。
パートナーを対象とした手術ワークショップ
手術室
手術を受けられる方は、手術をしたら、何がしたいのか、痛みがよくなったらどうしたいのかという目標を強く意識されないことが多く、また、それを聞いてくれる、医師や理学療法士、看護師がまだまだ少ないと思います。手術を受ける多くの方は、痛みのせいで、好きだったゴルフをやめました、旅行もやめました、ジムに行くのもやめましたと無意識に色々なことを諦めています。むしろ諦めているというよりは、思い出すのが嫌なので忘れようとされているのかもしれません。しかし、諦めていたことができていた時のワクワク感やドキドキ感をもう一度思い出してもらい、それをもう一度やりたいと思う目標を持つことが、人工関節の手術を受ける上では大変重要なことだと思います。
手術は、人生にとってとても大きな出来事だと思います。手術をきっかけに、自分はどういう人間だったのか、どう生きてきたのかと、しっかりご自身と向き合うチャンスだと思います。きちんと向き合うことで、本当に大切にしていきたいことは何なのか、本当は何がやりたかったのかが見つかると思います。それが分かると、行動が変わる方も多くおられ、大切だと思っていた優先順位が変わることがあります。入院期間中に一人で生活してくれている旦那さんや奥さん、見舞いに来てくれる息子さんや娘さんなど、普段は言いにくいかもしれませんが、誰かにありがとうと感謝を伝える期間にもなって欲しいと思います。
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