専門医インタビュー
人工膝関節置換術の流れ
膝の前面を切開して、変形・損傷した膝関節の表面を取り除いて、人工の関節に置き換える手術です。手術の一番のメリットは、痛みから開放されると共に、変形が治るため膝がまっすぐになり、変形性膝関節症などによるO脚も矯正されることです。また、膝関節の負担も軽減されるので、歩行や日常生活が楽になることが期待できます。人工膝関節置換術は、変形の度合いが強く、患者さんの年齢が比較的に高い場合に行います。
術後は、多くの患者さんが100度から120度ぐらい曲がるようになります。これくらい膝が曲がれば自転車も十分こげますし、しゃがみ込んで下のものが取れるので、日常生活のほとんどの動作が可能になります。また、人工膝関節置換術を受けた方の中には現役で農業を続けている方も多くいます。これまでと同じように農作業を続けることができるため、農業を継続してやるために手術を受けるという60歳後半の方々もたくさんいらっしゃいます。なお、人工膝関節置換術を受ける方の6割が女性です。やはり膝にかかる負担が大きいせいか、肥満や体格の良い方が人工関節にされることが多いようです。
手術と聞くと「怖い」というイメージを抱かれるかもしれませんが、人工膝関節置換術は、全国でも年間7万件行われていている身近な手術です。手術時間も約1時間半、術中の痛みは硬膜外麻酔を使いながら積極的に痛みをコントロールしているので安心です。また、人工膝関節の場合、9割以上の方が再手術をすることなく生活が可能といわれています。手術を受ける際、体力や年齢もあまり関係ないので、本人のやる気次第で何歳の方でも手術を受けていただけます。痛みなく生活したい、自立生活をしたいという方が多いので、我々もその方のニーズに一丸となって取り組んでいます。
人工膝関節置換後のX線
気になる医療費ですが、人工関節置換術には100%保険が適用されますが、さらに高額療養費制度の対象にもなっています。また、手術をしないでいた場合と比べて、今後かかる医療費が少なくなるともいわれています。実際にアメリカでは、介護や痛み止めなどの薬にかかる費用はもちろん、その後の寿命にも関わってくるので、人工関節にすることを勧めています。人工関節にするとその後の医療費があまりかからないことや、本人も寝たきりではなく歩いて日常生活が送れること、長生きすることなど、統計学的に裏付けしたデータも出ています。
人工膝関節置換術のリハビリプログラムの一例
入院期間は概ね3週間程度です。入院中は、出来るだけ早く回復していただくのを目標に、自宅で支障なく普段どおり日常生活が送れるようになるまでしっかりリハビリを行います。自宅のベッドからトイレまで手すりを持ちながら伝え歩きができるようになるとか、杖をついて歩けるようになるとか、その人に合った生活ができるようになるまでリハビリをするよう努力をしていて、きちんと歩けるようになってから退院していただきます。特に、呉は坂の多い地域ですから、坂道をきちんと歩けるようになるための訓練も行います。
手術後の主な流れとしては、入院3日目の手術当日はベッド上で安静が必要ですが、ベッドの枕もとを起こして座れます。そして術後2日目からが車いすでも移動可能になり、リハビリも始まり、まずは膝を動かす訓練からスタートします。術後4~5日後からは痛みに応じて体重をかけて歩く訓練も始まります。点滴は術後3日まででその後は通常の食事に戻ります。お風呂は術後11日目から入浴できます。
痛みが和らいで歩容が良くなった、連続して歩ける距離が延びた、生活が楽になったという声がほとんどです。また、歩き方が変わり、脚がまっすぐになると、生活や性格も明るくなり、特に女性は服装が若々しくなられる方もいて、皆さん手術を受けられて満足されているようです。また、仕事復帰はいつから出来ますかという質問もよくされますが、仕事内容にもよりますが、60代前半の方で手術して2ヶ月後にバリバリ仕事をこなしている方もいます。農作業に復帰される方も大勢いらっしゃいますよ。
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