メニュー

専門医インタビュー

股関節の痛み・違和感 放置せずに専門医に相談を症状に応じてさまざまな治療法があります

この記事の専門医

上島 圭一郎 先生

京都府

プロフィールを見る

医学博士、日本股関節学会 理事、京都府立医科大学 客員講師、日本整形外科学会専門医・指導医、日本リハビリテーション医学会専門医

この記事の目次

変形性股関節症にはどのような治療がありますか?

まずは、保存療法と呼ばれる手術以外の方法を試みます。代表的な保存療法として、リハビリテーション(運動療法)、薬物療法、日常生活指導があります。運動療法は理学療法士の指導のもと、可動域を広げる訓練、筋力訓練、歩行訓練などを行います。薬物療法は必要に応じて鎮痛剤を服用します。日常生活動作では杖の使用などを指導します。杖を使うと、股関節の負担が軽減され、症状が改善するケースもあります。
これらの保存療法を3か月~半年ほど実践していただき、経過をみていきます。患者さんの股関節の状態にもよりますが、保存療法で症状が改善する人も多くいらっしゃいます。一方で、保存療法を続けたけれど痛みが改善しない、痛みや可動域制限により日常生活に支障を来たしているといった状態の人は手術が次なる選択肢となります。手術には大きく「関節温存手術」と「人工股関節置換術」があります。

可動域を広げる訓練

関節温存手術とはどのような手術ですか?

関節温存手術(骨切り術)

関節温存手術(骨切り術)

関節温存手術は骨切り術といって、寛骨臼の一部を切って移動させることで浅くなっている荷重部を広げ、体重を支える面積を大きくする手術です。関節への負担を軽減し、安定化することで痛みや可動域の改善を目指します。
骨盤の骨切り術には骨の切る位置や切り方によっていくつかの方法があります。40代くらいまでの若い人で、変形が前期~初期の場合に適応となるケースが多いです。ご自身の関節を残せるため、より自然に近い動きを期待できます。一方で、変形が進行している場合には適応外となることがあります。また、将来的に骨切り術後に関節変形が進んでしまった場合には人工股関節置換術などの再手術が必要となることもあります。

人工股関節置換術とはどのような手術ですか?

人工股関節置換術

人工股関節置換術

変形して傷んでいる軟骨や骨を削り、金属でできた人工関節に置き換える手術です。痛みの原因となる変形した骨を取り除くため、除痛効果を見込めます。また理学療法を行うことで関節のスムーズな曲げ伸ばしや歩行を期待することができます。50代以上の中高年の人で、変形が進行期~末期の場合に検討されることが多いです。
人工股関節置換術で大切なのは、人工関節を適切な位置に設置することです。そのためには、一人ひとり異なる患者さんの股関節の形状を術前から詳細に把握し、人工関節の選択を含めて精密な術前計画を立てます。手術を横向きの状態で行いますが、体形や股関節の変形の影響により手術台上での骨盤の傾きが変わることがあります。そのため、術前にレントゲン撮影を行って骨盤の傾きなどを事前に確認し、適切な向きに調整してから手術を始めるようにしています。この工程を加えることで、適切な位置に人工関節を設置できる精度が高まり、脱臼など術後の合併症を少なくし、より長く人工関節の持ちを維持できると考えています。

人工股関節置換術のアプローチ方法について教えてください

後方アプローチ

アプローチ方法は、人工関節を設置するために進入する方向によって代表的には前方系、側方系、後方系があります。股関節の後ろ側から進入する後方アプローチは、さまざまな症例に対応することが可能です。一方で、術後合併症として懸念されているのが人工関節の脱臼です。後方アプローチは後ろ側の筋肉だけでなく、関節の周りにある筋腱(きんけん)や関節包(かんせつほう)といった組織を一旦切離します。そのため、安定性が下がり、術後、内股でしゃがみ込むような動きをした時に人工関節が外れてしまう可能性があります。このような脱臼への対策として、後方アプローチでも人工関節を設置した後に、切離した関節包や筋腱をしっかり修復してから手術を終える方法が標準的になっています。筋肉など組織をできるだけ温存することで、術後の脱臼リスクを低減できるだけでなく、早期の回復を目指すことができます。


この記事の医師がいる
病院の詳細はこちら

ページの先頭へもどる

PageTop