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専門医インタビュー

ひざの痛みは早めに専門医に相談を! 人工膝関節部分置換術など治療の選択肢が広がります

この記事の専門医

古橋 亮典 先生
  • 古橋 亮典 先生
  • 浜松赤十字病院 第二整形外科部長・リハビリテーション科部長・人工膝関節センター長
  • 053-401-1111

静岡県

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資格:日本整形外科学会専門医、日本スポーツ協会公認スポーツドクター、日本人工関節学会認定医
専門分野:膝関節、小児整形

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この記事の目次

手術を考えたほうがよいタイミングはありますか?

レントゲンの画像上では軟骨がなくなっている状態が手術のタイミングの1つといえます。しかし、最終的に手術のタイミングを決めるのは患者さん自身です。痛みを改善してどのような活動をされたいのか?患者さんによって考えはさまざまですので、それぞれの気持ちにあわせて治療法を検討していきます。例えば、痛みはあるが近所へのお買い物など日常生活でそこまで困っていないという方でしたら手術の必要はないかもしれません。一方で、軟骨はある程度残っているものの痛みで仕事や生活に支障が出ている方、痛みのせいでスポーツや趣味ができず再開を目指したい方でしたら、手術を選択肢の1つとして検討されてもよいと思います。手術に対してなかなか決断ができないのは当たり前のことで、ご自身の膝の状態とライフスタイルなどを十分に検討した上で治療を選択することが重要です。

変形性膝関節症の5段階

変形性膝関節症の5段階

手術にはどのような種類がありますか?

骨切り術

骨切り術

関節鏡手術

関節鏡手術

手術は「関節鏡手術」「骨切り術」「人工膝関節置換術」の大きく3つに分かれます。関節鏡手術(かんせつきょうしゅじゅつ)は小さいカメラを使う手術です。カメラで関節内を確認しながら、器具を使って傷んでいる軟骨、半月板などを切除します。小さい傷口で行うことができ、変形が比較的軽度の方が適応となります。骨切り術(こつきりじゅつ)は脛骨の一部を切って関節の体重がかかる位置を調整する手術です。ご自身の関節を温存できるので、40~50代で活動性の高い方を中心に実施されています。ただし、人工的に骨を切るため、骨がくっつくまで時間がかかり、入院、リハビリを経て社会復帰までにある程度の期間を要します。

人工膝関節置換術はどのような手術ですか?

全置換術(左)と部分置換術(右)

全置換術(左)と部分置換術(右)

人工膝関節置換術(じんこうひざかんせつちかんじゅつ)は高齢で変形のある患者さんに対し広く行われている手術です。手術では関節の傷んでいる骨を削り、金属などでできた人工関節に取り換えます。関節全体を置き換える「全置換術」(ぜんちかんじゅつ)と、片側(主に内側)のみを置き換える「部分置換術」(ぶぶんちかんじゅつ)があります。部分置換術は全置換術と比べて、人工関節のサイズが小さいデザインとなっています。そのため、手術する際の傷口が小さく、切開する筋肉の量も少ないのが特徴です。手術時間や入院期間も部分置換術のほうが短く、全置換術と比べるとより負担の少ない手術になります。

人工膝関節部分置換術はどのような方が適応となるのでしょうか?

膝の可動域

膝の可動域

部分置換術は、前十字靭帯(ぜんじゅうじじんたい)が健康な状態で残っている、軟骨の傷みが片側に限定されている、可動域(かどういき=動かせる範囲)が十分にある場合に適応となります。そのため、人工膝関節置換術が選択肢となった場合に、まずは部分置換術が適応となるかどうか慎重に検討します。これらの条件に満たない場合は全置換術を行います。
部分置換術を希望される方も多くいらっしゃいますが、全置換術と部分置換術にはそれぞれメリット・デメリットがあり、患者さんの膝の状態にあわせて検討することが重要です。例えば、可動域が不十分な方が部分置換術を行っても、手術後に可動域が大きく改善するというわけではありません。それは、部分置換術では手術前にその方が持っている可動域がそのまま継続されることが多いからです。一方で、全置換術を行えば、拘縮(こうしゅく)で膝が固まってしまっている場合は例外ですが、ある程度の可動域の改善を期待することができます。負担の少ない手術が必ずしもよいとは限らないということを覚えておいていただきたいです。
また大切なのは、こうした負担の少ない治療も含め幅広い治療選択肢を持てることだと思います。そのためにも、痛みがある場合は、変形や可動域の低下が進行してしまう前の早い段階で受診されることをお勧めします。

手術を受けるにあたりリスクとなる合併症にはどのようなものがありますか?

代表的な合併症に「感染」や「骨折」などがあります。感染とは、体内にある細菌が血液によって運ばれ人工関節に付着することで起こります。予防策として、手術中はよく患部を洗浄して清潔に保つようにします。また、必要に応じて手術後に点滴による抗菌剤の投与を行います。
骨折は、手術後に誤って転倒した時に、人工関節の周りで生じることがあります。骨折の状態が悪いと再び手術が必要になることもあるので、特に手術後は注意が必要です。入院中も無理に一人で行動しようとせず、必要に応じて看護師のサポートを受けながら過ごしていただくことが大切です。


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