専門医インタビュー
兵庫県
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人工股関節の一例
治療を続けても日常生活に支障が出るほど痛みが強い場合は、手術を検討した方がいいでしょう。手術は、傷んだ部分を切除し、人工股関節に置き換える「人工股関節置換術(じんこうこかんせつちかんじゅつ)」と「骨切り術(こつきりじゅつ)」という手術があります。
「骨切り術」は、骨の変形がそれほど進んでおらず、軟骨が残っている場合は、骨盤の一部を切って位置をずらすことでかぶりを深くするという方法です。ただ、人工関節より体に負担のかかる手術なので、40歳代までの若い方が対象です。
変形性股関節症に対しての手術は、「人工股関節置換術」が主流なのですが、人工股関節は人工物のため耐久年数があります。最近の人工関節はかなり性能がよくなっており、95%は20年の耐久性があるといわれていますが、それでも20年以内に再置換手術が必要になる可能性は否定できず、60歳代以降で手術を受ける方が多いのです。しかし、若い方でも痛みが強く日常や社会生活に支障をきたす場合、「骨切り術」に比べ入院期間が短く社会復帰の早い「人工股関節置換術」を選択される場合もあります。しかし、今後の人生を考えて手術だけでなくご自身の納得のいく治療方法を選択して欲しいと思います。
股関節の変形した部分を取り除き、金属やセラミックで作られた人工関節に置き換えます。具体的には、骨盤側の臼蓋にお椀のような形の金属(カップ)をいれ、大腿骨側には、ステムと呼ばれる人工物を設置します。そして、2つが接する部分には、軟骨の代わりになるポリエチレン(ライナー)をはさみ込みます。股関節が損傷したり変形していた部分を取り除き、人工物に置き換える手術方法になります。以前は、筋肉を大きく切り傷口が今とは比べものにならないくらい大きなもので、手術後は1週間くらいベッド上で安静にしておかないといけない手術でした。しかし、現在では、筋肉を温存し傷口も小さい身体に負担の少ない方法で行われ、傷口は縫わずにテープを貼ることで傷口が目立ちにくい手術になっています。そのため、手術翌日からリハビリを開始できるようになり、早期社会復帰が可能になっています。
ポータブルナビゲーションシステム
人工股関節の合併症の一つに人工関節の脱臼があるのですが、手術後の脱臼を防ぐためにも、スムーズに股関節を動かすためにも、この手術では、人工股関節が安定する位置に正確に設置することがとても重要になります。
そのため、手術前にCTの画像を使って脚の可動域などを3Dで正確にシミュレーションし、人工関節を設置する適切な位置や角度を割り出します。手術中はそのデータを元に、コンピュータを使ったポータブルナビゲーションシステムを使用し、術前にたてた計画通りに人工関節を設置できるようになっています。
人工股関節置換術では、どこから侵入するかによって、複数のアプローチがあります。かつては後方から大きく開いて手術することが多かったのですが、後ろからアプローチすると、どうしても筋肉を切ることになります。すると、手術後に人工関節を筋肉で十分に支えることができないため、脱臼しやすいというリスクがありました。
そこで現在は、筋肉を切らずに温存する「前方アプローチ」で行われるようになっています。筋肉を切らずにすめば、術後の痛みも少なくリハビリがスムーズに進められるだけでなく、脱臼のリスクも軽減できます。ただし、骨の変形が激しい人や身体が大きな方の場合は、前方からアプローチするのが難しくなるため、患者さんの状況に合わせてアプローチ方法が選択されています。
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