専門医インタビュー
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リバース型人工肩関節
肩関節は、上腕骨(じょうわんこつ)側が凸(とつ)、肩甲骨(けんこうこつ)側が凹(おう)の形になっています。従来の人工肩関節は凹凸が本来の肩関節と同様だったため、除痛は望めても動きの改善は期待できませんでした。これに対しリバース型人工肩関節は、凹凸の位置を反転(リバース)することで回転中心がしっかりと定まり、肩関節が安定します。そのため、腱板が切れていても三角筋の力を利用して肩の動きが再現できるという、非常に画期的な術式です。ただし、挙上や横から腕を上げる動きは格段に良くなるものの、頭に手を持っていくという動作や、下着を上げきれしにくくなります。とはいえ、食事や洗顔、爪の手入れといった日常生活動作の不自由さが改善し、痛みも大きく改善するリバース型人工肩関節の登場は、肩の機能回復をあきらめていた患者さんにとって、大きな恩恵だといえるでしょう。
日本で行われるリバース型人工肩関節置換術は、適応疾患や推奨年齢が定められており、実施できる医師に関しても、肩関節に関する手術の症例数や講習会受講など、厳しい実施基準が設けられています。これは、先行してリバース型人工肩関節を導入した海外で報告された、合併症率の高さに起因しています。報告では、術中骨折、神経麻痺、脱臼、術後の感染も含めた合併症率が20~30%もあったのです。これを基に、日本では実施基準を設けて導入したところ、この5年間の合併症率は多い報告でも5~6%、少ない報告では3%程度でした。後発であったが故に、対策を練って対応できたといえます。
導入から5年たった現在では、リバース型人工肩関節置換術の全国への一層の普及を目指すため、肩関節の専門医でなくても骨粗しょう症を伴う上腕骨近位部骨折(じょうわんこつきんいぶこっせつ)に対してリバース型人工肩関節置換術が行えるようになるなど、実施基準はいくぶん緩和されています。推奨年齢も70歳から65歳に引き下げられました。
2014年の導入当初は、骨の中に埋めるステムという部分が長いタイプが多く、周囲の骨が弱くなってしまったり、ゆるみや破損で入れ替えが必要になった場合に大きな骨の欠損ができてしまう可能性がありました。しかし現在では改良され、短いタイプや小さいタイプなどサイズバリエーションが増えています。また、人工肩関節の耐用年数は、海外のデータによると85%の人が15年使用できているというのが一般的ですが、昨今の人工肩関節の進化を考えると、今後のリバース型人工肩関節の耐用年数は、より長期化することが期待できます。
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